出典: 株式会社ムービン・ストラテジック・キャリア「2026年12月期 第2四半期決算説明資料」(2026年8月12日発表)。以下、本記事の図表・数値はすべて同資料に基づく。
ムービン・ストラテジック・キャリア(東証グロース・421A)は、1996年創業のコンサルティング業界特化の人材紹介会社です。代表の神川貴実彦氏はBCG(ボストン コンサルティング グループ)出身で、社外取締役には元PwC日本代表の椎名茂氏が名を連ねます。連結従業員150人(2026年6月末)という少数精鋭の組織で、戦略ファームからBIG4・AIコンサルまで、コンサル転職の草分けとして25年超の実績を持ちます。
この会社の決算がなぜ業界全体にとって重要か。それは、「専門特化×少数精鋭×自前集客」という戦略の到達点を、上場企業の開示水準で見せてくれるからです。
| 項目 | 2026年12月期 上期 | 前年同期比 | 修正計画比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 31.7億円 | +76.1% | 102.2% |
| 売上総利益 | 29.4億円(率92.8%) | +70.6% | 101.9% |
| 営業利益 | 15.8億円(率49.7%) | +62.9% | 100.6% |
| 純利益 | 10.4億円(率32.7%) | +63.6% | 100.6% |
今期から賞与引当金の計上方法を年間進捗比例型へ変更しており、上期に△2.4億円のインパクトが出ています(通期利益への影響はなし)。従来基準なら上期営業利益は18.2億円・+88.1%。見かけの+62.9%より実態はさらに強い、という読み替えが必要です。

2Q売上は18.3億円と前年同期比+95.9%でほぼ倍増。1Qに続き2四半期連続で過去最高を更新しました。背景にあるのはAIコンサル需要の拡大です。大手・中堅ファームがこぞってAI関連の採用を活性化させており、クライアントの採用ニーズは「極めて旺盛」と資料に明記されています。

成長の中身を分解すると、平均成約単価がFY25下期比+17.8%上昇し、転職支援人数(入社人数)も+33%——単価と件数が同時に伸びる、人材紹介として理想的な形です。コンサル転職は年収水準が高く手数料率も高いため、1件あたり数百万円規模の成約単価になります。AIコンサル人材の争奪戦が単価をさらに押し上げている構図です。

キャリアアドバイザー(CA)はFY22の34人から2Q末126人へと4年で約3.7倍。2Qだけで+14人と採用ペースは加速しています。そして最大の驚きが一人あたり生産性の月455万円(FY25比+27.2%)。JACの月201万円、パーソルキャリアの月326万円(いずれも定義は各社基準)と並べても頭一つ抜けた水準で、増員しながら生産性も上げるという、人材ビジネスの最難関を突破しています。

営業利益率49.7%・売上総利益率92.8%という数字の源泉は、ビジネスモデルの構造にあります。資料が示す競争優位は4つ——①集客から紹介までの一気通貫(スカウト媒体の利用料や紹介手数料の分配といった収益の外部流出がない)、②25年超で構築した約11.8万人の自社データベースとデータベースマーケティング体制、③他社比で競争力のある報酬体系による採用力、④採用意欲の変化に応じた機動的な顧客ポートフォリオ入替。特筆すべきは広告宣伝費ゼロで20〜30代の若手プロフェッショナル人材を安定集客している点で、ブランドとSEO・コンテンツの蓄積が「無料の集客装置」として機能しています。
①成功報酬型ゆえ売上は入社日まで確定せず、四半期単位の変動が大きい(会社も明記)。②業績はコンサル業界の採用意欲に集中依存しており、AIコンサル需要が一巡した場合の反動リスクがある。③創業者とその親族の持株比率は71.7%と高く、流動性・ガバナンスの観点は上場グロース企業として留意点。急成長企業の決算は、追い風の持続性とセットで読む必要があります。

| 項目 | 当初計画 | 最新修正計画 | 増減率(対FY25) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 50.0億円 | 64.0億円 | +68.4% |
| 営業利益 | 22.9億円 | 30.3億円 | +32.3%(計画比) |
通期計画は期初の50億円→58億円→64億円へと2度目の上方修正。中期では2028年に売上100億円(FY25→FY28のCAGR約38%)を、M&Aに頼らずオーガニック成長のみで目指すとしています。150人の会社が描く計画としては強気ですが、上期の達成率102.2%という実績がその裏付けになっています。
営業利益率49.7%は、人材紹介業でも異例の水準だ。その正体は「AIコンサル特需」だけではなく、広告費ゼロの自前集客と収益を外部流出させない一気通貫モデルという、25年かけて作った構造にある。特需はいつか一巡するが、この構造は残る。専門特化×自前集客の教科書として読むべき決算だ。
現場への示唆は3つ。①専門特化の経済性——「コンサル業界なら日本一詳しい」という尖りが、単価・生産性・集客コストのすべてを改善する。総合型で消耗しているエージェントほど、この決算は領域特化を考える材料になります。②コンテンツは資産になる——25年分の業界情報発信が広告費ゼロの集客装置になった事実は、日々のナレッジ発信の価値を裏付けます。③コンサル転職市場の熱——JACの業種別データ(コンサル+55.2%)とムービンの+76.1%は同じ現象の両面。コンサル志望の候補者を持つエージェントにとって、いまが歴史的な追い風であることを、この2つの決算が示しています。
JAC Recruitment(ハイクラス両面型) / ギークリー(IT特化×分業型) / パーソルキャリア(doda・Career SBU) — 4社を並べると、人材紹介ビジネスの勝ち筋が立体的に見えてきます。