「コンサルファームには営業がいない」とよく言われます。伝統的な戦略系・総合系ファームにおいては、これは概ね正しい。案件を獲得するのはパートナー(共同経営者クラス)の仕事だからです。パートナーは経営者との長年の信頼関係、過去プロジェクトの実績、業界での評判を元手に案件を「作り」、その下でマネージャー以下がデリバリー(実行)を担う——つまりファームとは、職位が上がるほど営業職に近づいていく組織です。
これはコンサル志望者が見落としがちな重要事実です。「分析が好きだからコンサルへ」という動機で入っても、マネージャー以降は案件獲得への貢献、パートナーに至っては売上責任そのものが問われます。コンサルタントのキャリアの最終試験は、実は営業力なのです(職位別の役割はコンサル転職 完全ガイド参照)。
この伝統に対し、対照的な設計で急成長したのがベイカレントです。同社は案件獲得を専門に担う部隊とコンサルタントを分業させるモデルで知られます。コンサルタントはデリバリーに集中し、クライアント開拓・リレーション構築・案件の入り口作りは専門組織が担う——「One Baycurrent」のワンプール制と並ぶ、同社の成長エンジンです。
この設計の合理性は明快です。①パートナーの人脈という属人資産に依存せず、組織として案件パイプラインを作れる。②コンサルタントの稼働率が上がる(営業に時間を取られない)。③営業のプロフェッショナルがファームで活躍する明確なポジションが生まれる。人材紹介業界の両面型/分業型の対比(エージェントとは何者か)と同じ構造の進化が、コンサル業界でも起きているのです。
ここから導かれる実践的な結論は、営業のプロがコンサル業界に入る道は「コンサルタントになる」だけではないということです。無形商材・高単価・経営層向けの営業経験者にとって、ファームの営業・BD職は経験がダイレクトに活きるポジションです。ケース面接を突破してコンサルタントになるルート(営業からのコンサル転職)と並ぶ、もうひとつの現実的な選択肢として知っておく価値があります。
そしてこの営業職は、AI時代に価値が上がる営業の典型です。売るものは「目に見えない知的サービス」であり、顧客の言語化されていない経営課題を掘り当て、数千万円規模の意思決定を支援する——情報処理ではなく、課題発見と信頼構築が仕事のすべて。営業というキャリアの、ひとつの到達点と言えます。
コンサル志望の候補者に対して「コンサルタント職」だけを見ていると、提案の幅を自ら狭めます。営業力が突出した候補者には、ファームの営業・BD職という選択肢を提示できるか。ファームごとの営業体制の違い(パートナー型か分業型か)を語れるか。この解像度が、コンサル領域を扱うエージェントの差になります。