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ヒューリックの企業情報
平均年収2,295万円で"キーエンス超え"の日本一 — 社員約240人の不動産会社を徹底分析

2026.09.03 公開|THE AGENT編集部

「日本一年収が高い会社は?」と聞かれて、多くの候補者は「キーエンス」と答えます。しかし2025年度、その常識は更新されました。東京商工リサーチの調査で、上場企業(事業会社)の平均年収首位に立ったのはヒューリック — 2,295万4,000円。前年度から12.7%増で2年連続の2,000万円超え。2位M&Aキャピタルパートナーズ(2,266万円)、3位キーエンス(2,178万円)を抑えての首位です。

キーエンスを超えたのは、派手なテック企業でも外資でもなく、単体約240人で銀座のビルを37棟持つ不動産会社でした。なぜこの会社は日本一払えるのか。事業・決算・採用・選考を、エージェントが候補者に語れる解像度で分解します。

Summary
  • 2025年度の平均年収は2,295万円(平均年齢39.7歳・前年比+12.7%)で上場企業首位。ただしこの数字は出向者を除く単体約240人のもので、若手はグループ会社出向が多い——エージェントはこの構造まで正確に説明すべき。
  • 高年収の源泉は「資産が稼ぐ」ストック型×少数精鋭。駅徒歩3分以内・1フロア50〜100坪の中小ビルに絞る差別化で空室率0.4%(都心5区平均3.8%)、1人当たり経常利益は6.6億円
  • 採用は新卒年7〜12名・倍率約150倍の超狭き門だが、中途採用は積極化。18期連続最高益・「不動産の商社化」を掲げる中計で事業領域は拡大中で、提案機会は増える方向にある。
2,295万円
平均年収(25/12期有報)
上場企業1位・+12.7%
6.6億円
1人当たり経常利益
(2025年実績・同社IR)
0.4%
オフィス空室率
(都心5区平均は3.8%)
18期連続
最高益更新見込み
増配も18期連続へ

出典: 東京商工リサーチ(2026.8)、同社有価証券報告書・2026年12月期1Q決算説明資料、テレビ東京「カンブリア宮殿」(2025.7)ほか

Chapter 130秒でわかる結論 — 「キーエンス超え」の正体は銀座の大家

一言で

キーエンスが「人が売って稼ぐ」日本一なら、ヒューリックは「資産が稼ぐ」日本一。少数精鋭が優良資産を回す構造が、平均年収2,295万円の原資です。

項目内容
会社ヒューリック株式会社(証券コード3003・東証プライム)。本社は東京・日本橋大伝馬町。前身は富士銀行系の日本橋興業(1957年設立)
事業都心駅近の中小オフィス・商業ビル等の賃貸を中核に、不動産投資・開発、観光(ふふ/THE GATE HOTEL)、こども教育、データセンターなど新規8分野へ展開
規模2025年12月期 経常利益1,729億円。デベロッパーとして三井不動産・三菱地所・住友不動産に次ぐ水準の利益規模(住宅系除く)
象徴銀座に37棟のビルを保有する「銀座の大家」。単体社員は約240人
経営急成長の立役者は西浦三郎会長(元みずほ銀行副頭取、2006年に社長就任)。現社長は前田隆也氏

Chapter 2年収2,295万円の解剖 — 推移・役職別・注意点

図は横にスクロールできます
上場企業 平均年収TOP3(2025年度・東京商工リサーチ) 1位 ヒューリック2,295万円(+12.7%) 2位 M&Aキャピタルパートナーズ2,266万円 3位 キーエンス2,178万円 不動産デベロッパー大手との比較(各社有報) ヒューリック2,295万円 三井不動産約1,269万円 三菱地所約1,246万円 ※デベロッパー比較は直近公表期の有報ベースの参考値。決算期・算出対象が各社で異なる
図1: 「日本一」の位置 — キーエンスを117万円上回り、財閥系デベの約1.8倍(編集部作成)

推移 — 3年で約400万円上がった

年度(12月期)平均年収平均年齢
2018年1,636万円39.9歳
2020年1,708万円39.5歳
2022年1,904万円39.6歳
2025年2,295万円39.7歳

背景には業績連動の高い賞与(年収の4割程度が賞与とされる)に加え、2026年度も定例昇給とは別にベア6%という継続的な賃上げがあります。役職別・年齢別の水準は口コミ・調査ベースの推計で次の通り。年収1,000万円には30歳前後で到達し、38歳平均で2,000万円を超えるとされます。

役職(年次目安)年収レンジ(推計)
役職なし(1〜5年目)500〜750万円
主任(5〜8年目)800〜1,000万円
部長代理(8〜10年目)1,000〜1,200万円
参事役(10〜12年目・管理職)1,200〜1,500万円
次長(12〜15年目)1,500〜1,800万円
部長評価次第(2,000万円超)
エージェントが正確に伝えるべき注意点

有報の平均年収は出向者を除く単体(約240人)の数字です。若手はグループ会社へ出向するケースが多く、単体在籍者は相対的に上位層の比率が高くなるため、平均は高く出やすい構造があります。「全社員が2,300万円もらえる」と誤解させる紹介はNG。役職別カーブと合わせて、構造ごと説明するのが誠実です。

Chapter 3なぜ払えるのか — 1人当たり経常利益6.6億円の構造

一言で

同社IRが掲げる生産性指標は「1人当たり経常利益6.6億円」。人が労働時間で稼ぐのではなく、優良資産が生む賃料収益を少人数で回すから、この数字になります。

構造は3段です。① 都心駅近の優良ビルという「稼ぐ資産」を保有する(ストック型収益)。② その取得・開発・バリューアップを、専門性の高い少数精鋭(単体約240人、物件取得チームは36人)が担う。③ 生まれた利益を、業績連動の高い報酬で社員に厚く分配する。東洋経済の調査では「社員の時給が高い会社」ランキングでも日本一(時給換算7,950円)とされており、残業約20〜30時間・有給取得率81.2%と、労働時間を増やして稼ぐモデルではないことが数字で裏づけられます。

Chapter 4事業分析 — 駅近中小ビル×空室率0.4%の「弱者の戦略」

西浦会長の言葉を借りれば「同じことをやったら、大きいところが絶対勝つ」。財閥系3社と同じ大規模再開発では戦わず、差別化に徹しているのがヒューリックの事業です。

戦略中身
① 駅近の中小物件に集中取得物件の多くが駅徒歩3分以内。1フロア50〜100坪という「最もテナントが多い層」に照準。結果、オフィス空室率は0.4%(都心5区平均3.8%・2025年3月時点)とほぼ満室
② 郊外でも一等地だけ駅前一等地の商業施設を買い取り再生(例: イトーヨーカドー東大和店→LICOPA東大和。売場を1/3に縮小しファミリー向けテナントを誘致、来客+20%・ヨーカドーの売上も+4割)
③ 環境技術で選ばれる米MITと共同開発した採光ルーバー(特許)、無動力の自然換気、小水力発電。2029年までに保有ビルの再エネ100%を掲げ、環境目標を持つテナント(ユナイテッドアローズ等)の入居動機に
④ 新規事業で複線化観光(高級旅館「ふふ」・THE GATE HOTEL)、こども教育(こどもでぱーと→20拠点構想、リソー教育)、高齢者・健康(クックデリ)、都市型データセンター(2036年に総IT容量100MW超目標)など8分野

候補者への説明で効くのはこの一文です——「銀座に37棟。20年前は2棟だった」。規模ではなく選球眼で勝ってきた会社だと、一発で伝わります。

Chapter 5決算分析 — 18期連続最高益と、26年1Qの正しい読み方

2026年12月期は18期連続の最高益更新を見込み、通期予想は営業利益2,100億円・純利益1,210億円。年間配当は67円と上場以来18期連続増配を見込み、配当性向は2029年に向けて45%へ段階的に引き上げる方針です。

直近1Q(2026年4月開示)は一見「営業利益311億円・前期比▲2.0%」と減益に見えますが、ここに読み方の落とし穴があります。減益の正体は、子会社リソー教育の株価に応じた追加的なのれん償却69億円という会計上の特殊要因。これを除いた実力ベースでは営業利益381億円(+20%)・純利益251億円(+46%)と大幅増益で、営業収益は2,268億円(+44.8%)。国内で約1,600億円の投資が確定・内定、観光事業も開業費を除けば約4割増益と、中身は絶好調です。「減益」の見出しだけで候補者に語ると本質を外します。

Chapter 6未来 — 「不動産の商社化」中計2026-2036

図は横にスクロールできます
経常利益の階段 — 「不動産の商社化」で3,000億円へ(同社中計) 1,729億円2025年 実績 1,850億円2026年 予想 2,200億円2029年 計画 3,000億円2036年 計画
図2: 中長期経営計画(2026-2036) — M&AフェーズI投資枠3,000億円・ROE12%程度以上(同社IRを基に編集部作成)

2026年策定の中長期経営計画が掲げるキーワードは「不動産の商社化」。金利ある世界への激変を前提に、不動産事業を核としつつM&A(フェーズI投資枠3,000億円)で成長事業を取り込み、コングロマリットプレミアムの創出を狙います。すでにリソー教育(教育)・鉱研工業(環境インフラ)・クックデリ(高齢者食)を連結化。ROE12%程度以上を照準に、2036年に経常利益3,000億円——現在のほぼ倍を目指す絵です。エージェント視点では、事業領域の拡大はグループ全体での人材需要の拡大を意味し、本体の狭き門の外側に提案機会が広がっていく構図です。

Chapter 7採用・選考・働き方 — 倍率150倍の門をどう案内するか

採用の実態

項目内容
新卒採用年7〜12名程度。2025年春入社は7名に対し応募約1,000人、倍率約150倍。採用大学は東大・京大・一橋・早慶など最難関中心
初任給学卒35万円・院卒39万円へ引き上げ(業界トップ水準・2026年度)
中途採用近年積極化。西浦改革以来、大手ゼネコン・不動産・金融出身者や弁護士など専門人材の中途登用が成長の原動力で、20代・第二新卒の転職実績もある
求める人材少数精鋭ゆえ一人の裁量が大きい。「若いうちから大きな仕事を任される」ことを魅力に挙げる社員の声が象徴的で、専門性+当事者意識が軸

働き方 — 高年収と両立する数字

平均残業は月20〜30時間程度、自己都合離職率は概ね1〜5%、有給取得率81.2%。福利厚生は朝・昼の食事無償提供、月0〜2万円の独身寮、無料の事業所内保育園、選択的週休3日制、育休復職率100%(男性取得率も100%)、第3子以降の出産祝い金100万円など、「稼げるのに続けやすい」設計が徹底されています。ハードワークで年収を買うタイプの会社ではない——ここがキーエンスとの決定的な違いであり、候補者への訴求ポイントです。

選考でのポイント

採用数が少ないため、選考は人物・地頭・専門性の総合勝負になります。エージェントとしては、①不動産・金融・建設など隣接専門性の翻訳(再現性の定数・変数フレームがそのまま使えます)、②「なぜ大手デベではなくヒューリックか」への回答設計(規模ではなく差別化戦略・裁量の大きさに接続する)、③中計「不動産の商社化」を踏まえた逆質問の仕込み、の3点を押さえてください。

Conclusionキーエンス比較 — 同じ「日本一」でも稼ぎ方が真逆

ヒューリックキーエンス
平均年収2,295万円(39.7歳・25/12期)2,178万円(3位)
稼ぎ方資産が稼ぐ(ストック型賃貸収益×少数精鋭)人が売って稼ぐ(直販×高付加価値メーカー・営業利益率50%超)
組織規模単体約240人数千人規模の営業組織
働き方残業20〜30h・有給81%・週休3日選択制高規律・高密度の直販営業スタイル
中途の門戸狭いが積極化(専門人材中心)営業職を中心に継続採用
向く候補者専門性で少数精鋭に入り、資産と時間を味方につけたい人営業力で正面から日本最高水準を取りにいく人

「年収日本一」という同じラベルの下に、まったく別の2つのモデルがあります。候補者の武器が営業の実行力ならキーエンス、専門性と目利きならヒューリック。詳細比較はキーエンスの企業情報と併せてどうぞ。他の高年収企業研究は霞ヶ関キャピタル総合コンサル年収ランキングへ。

出典・注記
  • 平均年収ランキングは東京商工リサーチ「上場企業3,123社 平均年間給与調査」(2026年8月・2025年度決算対象)。年収推移・平均年齢は同社有価証券報告書
  • 業績・中計・生産性・人事施策は同社「2026年12月期 第1四半期 決算説明資料」(2026年4月27日)に基づく
  • 事業エピソード(銀座37棟・空室率・倍率150倍・沿革等)はテレビ東京「カンブリア宮殿」(2025年7月放送)の公開記事に基づく
  • 役職別・年齢別年収は口コミ・エージェント調査ベースの推計。選考・制度は時期により変動します。ロゴは同社の商標であり、本記事は同社と提携関係にありません