「平均年収日本一の常連」——その一言で語られがちなM&Aキャピタルパートナーズ(MACP)を、本稿は一次情報で解剖します。同社が採用ページで公開している数字は強烈です。M&Aアドバイザー(在籍1年超)の年収は、平均3,007万円・中央値2,146万円(2025年9月期実績)。平均と中央値の両方を公開する採用姿勢自体が、この会社の性格を物語っています。
掲げるビジョンは「世界最高峰の投資銀行」。報酬テーブル、生産性の構造、8つの職種、選考フロー、そして誠実に伝えるべき注意点まで——エージェントが候補者の人生を預かるに足る解像度で分解します。
出典: 同社採用ページ(HRMOS・2026年時点)、有価証券報告書、公式サイト、東京商工リサーチ、LSEGリーグテーブル、リメディ社取材記事ほか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社 | M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(6080・東証プライム)。2005年設立、代表は自身も現役トッププレーヤーの中村悟社長。本社は東京ミッドタウン八重洲36階(東京駅直結)、大阪・名古屋・博多に拠点 |
| 事業 | 中堅・中小企業の事業承継を中心とした友好的M&A仲介。着手金無料・売り手買い手同一の株価レーマン方式という透明な手数料体系を創業以来貫く |
| 実績 | 累計成約1,000組超。LSEGのM&Aリーグテーブルで国内案件数3部門1位(2025年)、2026年上半期も3冠。TSRの競合調査では1人当たり売上高・1人当たり経常利益・平均譲渡価格など主要10項目でNo.1「業界10冠」 |
| 組織 | 連結361名・単体288名(2025年6月末)。平均年齢は31〜32歳前後で推移し、直近5年の離職率は約5%と低い |
| グループ | レコフ(1987年創業の老舗M&Aファーム)、レコフデータ(M&Aデータベース/MARR)、みらい共創アドバイザリー(企業再生)。2016年のレコフ買収(約30億円)で案件情報・ブランド・クロスボーダー機能を獲得 |
| ビジョン | 「クライアントへの最大貢献と全従業員の幸せを求め世界最高峰の投資銀行を目指す」。仲介に留まらず大企業FA(IBカバレッジ部)を新設するなど、投資銀行化への布石を打っている |
年収の話の前に、原資の構造を押さえます。同業上場社との比較(有報ベースの参考値)で、MACPの特異性は一目瞭然です。
| 比較軸 | MACP | 日本M&Aセンター | ストライク |
|---|---|---|---|
| スタイル | 1人が売り手・買い手の両面を一気通貫(ソーシング→マッチング→エグゼキューション→クロージング) | 分業体制・ミドルバック充実 | 専任+マッチング分業あり |
| 成約1件あたり売上 | 約1億円 | 約4,000万円 | 約5,500万円 |
| 平均譲渡価格 | 約15億円(業界最大級) | 中小中心で小さめ | 中間 |
| 人件費還元率の目安 | 売上の約22% | 約18%(多機能ゆえ単純比較不可) | 約26% |
つまりMACPの高年収は、還元率が飛び抜けているのではなく、①1件の単価が大きく(大型案件×株価レーマン)、②その1件を1人で完結させることで、1人あたり売上高(1.4億円超の年もある)が業界最高水準になっていることの帰結です。裏返せば、ソーシングの泥臭さから契約書周りの緻密さまで、全工程の能力を1人に要求するモデルでもある——ここが向き不向きの分水嶺になります。
同社は採用ページで報酬の内訳を異例の細かさで公開しています。中途アドバイザーの場合、構造は次の4層です。
| 層 | 中身 |
|---|---|
| ① 最低保証年収 | メンバー600万円(月給40万円〜+入社2年間は年120万円の賞与前倒し)。役職採用は主任660万/課長・次長1,000万/部長1,200万円を保証 |
| ② KPIインセンティブ | 成約前の活動(面談・受託等のプロセス)に紐づく報酬。入社初年度の平均は128万円(直近期実績・同社公表) |
| ③ M&A成約インセンティブ | 報酬の本体。成約案件の手数料に連動し上限なし。1件成約時のインセンティブは概算で1,000万円台後半〜になるとの外部試算もある(案件規模による) |
| ④ 決算賞与 | 会社業績に連動して支給 |
| 採用区分 | 想定初年度年収(同社採用ページ) |
|---|---|
| 新卒 | 約712万円(保証564万円+お祝金20万円+KPIインセン平均128万円) |
| 中途メンバー | 約728万円〜+成約インセンティブ+決算賞与 |
| 主任 | 788万円〜 |
| 課長・次長 | 1,128万円〜 |
| 部長 | 1,328万円〜 |
| IBカバレッジ(大企業FA) | 提示例: 30歳・バンカー経験4年で1,500万円(保証込)+成約インセンティブ |
①初年度は保証600万円+α から始まる。前職年収1,000万円超のトップセールスにとって、成約までの期間(数ヶ月〜年単位)は事実上の年収ダウン期になりうる。②平均3,007万円と中央値2,146万円の差861万円が示す通り、分布は上に長い——「平均がもらえる」のではなく「天井がない」が正しい説明。③有報の全社平均も期により2,202万〜3,161万円と振れる。この3点を先に開示した上で「それでも行く理由」を一緒に作れるかが、紹介の質そのものです。同社自身が中央値まで公開している以上、エージェントが平均だけで語るのは怠慢と言えます。
| 項目 | 実像(同社公開情報・口コミベース) |
|---|---|
| 仕事の進め方 | 週の前半に全体ミーティング・勉強会・事例共有会。それ以外は基本的に自由裁量で、1人平均4〜5件の案件を並行しながら新規開拓を続ける。出張も多い |
| 労働時間 | 定時は8〜17時(または9〜18時の選択制)。残業は口コミベースで月60時間程度。案件の山場では深夜・土日対応もありうる一方、有給は取りやすいとの声 |
| 教育体制 | 入社半年間の「OJTロードマップシステム」で基礎を体系的に習得。役職者の案件に同席するOJTが継続し、「今の悩みは誰かが過去に悩んでいる」という相互支援の文化 |
| 定着 | 直近5年の離職率は約5%と、報酬の派手さから想像されるより大幅に低い。平均勤続約3年は「毎年2割の新規入社で分母が若い」ことの影響が大きい |
| カルチャー | 各業界のトップセールス出身者が集まるが、社風は競争より協力的との口コミが目立つ。中村社長は「M&Aは結婚。誠実さがなければ大切な財産は託されない」と語り、誠実さ×情熱を行動指針の中核に置く |
「MACP=M&Aアドバイザー一択」という理解は、すでに古い。採用ページ(HRMOS)には約28の求人が並び、候補者のタイプ別に複数の入口があります。エージェントにとってはここが提案の腕の見せ所です。
| ポジション | 特徴 | 向く候補者 |
|---|---|---|
| M&Aアドバイザー(企業情報部) | 本流。アウトバウンドでのソーシングからクロージングまで一気通貫 | 無形・金融・不動産等のトップセールス。開拓力と胆力 |
| 提携先開拓(新設) | 金融機関・会計事務所との提携ルート構築に特化した初の専任職。案件対応は一気通貫のまま | アライアンス営業・金融法人営業の経験者 |
| IBカバレッジ部(新設) | 大企業のM&A・非公開化・PEファンド案件に特化したFAチーム。縦割りにせず一気通貫が特徴 | 投資銀行・FAS出身者。30歳経験4年で1,500万円保証の提示例 |
| M&Aディールサポート | 電話営業なし。案件化後にアサインされ、課長以上と2名体制でクロージングまで推進 | 営業開拓は避けたいが実務推進力が高い人材。未経験可の教育体制 |
| 買収戦略アドバイザー(提携支援部) | 買い手側の成長戦略提案に特化(エグゼキューションなし)。年収は平均1,528万円・中央値1,474万円(25/9期・在籍1年超) | コンサル的な戦略提案が得意な営業 |
| コーポレートアドバイザー | 会計士・税理士・弁護士・司法書士の社内専門家チーム。会計士は在籍1年超で年収2,000万円超が5年連続、賞与は月給18ヶ月分相当の実績 | 士業資格者。M&A実務で稼ぎたい専門家 |
| ミドル・バック | ドキュメントプランナー(企業概要書50〜100頁を制作)、経営企画・IR、広報、HRBP、営業アシスタント(平均588万円)など | M&A業界に非営業で関わりたい人材 |
| グループ: レコフ | 1987年創業の老舗。カバレッジ+CFDのFA型分業で上場企業3,500社の9割をカバー。入社1年以上平均1,040万円/3年以上1,412万円、借上げ社宅あり | MACP本体より段階的に学びたい人・上場企業案件やクロスボーダー志向 |
特に注目すべきは、同一グループ内に「両面仲介の頂点(MACP)」と「FA型の老舗(レコフ)」の両方があること。攻めの開拓力に自信がある候補者はMACP、段階的にM&A実務を積みたい候補者はレコフやディールサポート——と、適性で振り分けられる構造は、他のM&A仲介にはない提案の幅です。
| 段階 | 中身と対策 |
|---|---|
| 書類選考 | 実績は「達成率」だけでなく順位・母数・期間(例: 営業200名中1位を3期連続)まで相対化して記載する。ここの具体性が通過率を分ける最大変数 |
| 1次面接 | 配属予定部署の部長。実績の再現性——なぜ売れたのかを構造で語れるか——が問われる。定数と変数のフレームがそのまま使える |
| 2次面接 | 中村社長が自ら面接する。現役トッププレーヤーである社長に対し、営業観・誠実さ・「なぜMACPか」を語る。行動指針(誠実さ・情熱・世界最高峰への拘り)との整合が見られる |
| 会食 | 最終判断は会食スタイル。経営者と長期の信頼関係を築く仕事ゆえ、場の振る舞い・人間性そのものが評価対象 |
要件の目安は「金融・事業会社での営業経験2年以上+際立った成績」で、採用の中心は20代半ば〜後半(平均年齢31〜32歳の組織構成と整合)。志望動機は「稼ぎたい」だけでは弱く、事業承継という社会課題(後継者不在の中小企業)への当事者性と、「M&Aは結婚」という同社の顧客観への共鳴を、本人の原体験と接続して組み立てるのが定石です(志望動機の作り方)。逆質問では、平均譲渡価格15億円という大型シフトやIB部新設など「世界最高峰の投資銀行」への進捗を仮説つきで聞けると一段上に見えます(逆質問の設計)。
MACPは、営業で頂点を取りたい候補者にとっての最終到達点の一つです。だからこそ、平均3,007万円の派手さではなく、中央値2,146万円・保証600万円・成約までの谷まで含めた全体像で語り、適性(一気通貫の開拓力か、ディールサポートか、レコフか)まで設計して送り込む。資産が稼ぐヒューリック・仕組みが稼ぐキーエンス・成約が稼ぐMACP——「日本一の稼ぎ方」3部作の地図は、ハイクラス面談の鉄板です。