総合商社は、日本にしか存在しない業態です。「ラーメンから航空機まで」と言われるほど扱う商材に一貫性がなく、海外に同じ形の会社がありません。
では何をしている会社なのか。取引が成立しない理由を、片端から取り除く仕事だと考えると、資源開発からコンビニ経営まで手がける理由が見えてきます。
明治の日本には、貿易を行う能力がありませんでした。外国語も、国際的な商慣習も、資金の決済も、誰も知らない。個々のメーカーが自力で輸出することは不可能でした。
そこで、貿易に必要な機能を一手に引き受ける会社が生まれます。言葉を話し、相手を見つけ、代金を立て替え、船を手配し、保険をかける。これが総合商社の原型です。
欧米では、これらの機能が銀行・海運・保険・専門商社に分かれて存在していました。日本にはそれがなかったから、一社が全部を担った。
1990年代、総合商社は存在意義を問われます。メーカーが自力で海外と取引できるようになり、間に立つ意味がなくなったと見られた。
| 時代 | 商社の役割 | 収益の源 |
|---|---|---|
| 明治〜戦後 | 貿易の代行 | 口銭(手数料) |
| 高度成長期 | 原料の調達と製品の販売 | 取引量に応じた手数料 |
| 1990年代 | 仲介の価値が低下 | —(危機) |
| 2000年代〜 | 事業への投資と経営 | 権益からの配当・事業の利益 |
答えは投資でした。仲介料を取るのではなく、その事業の株主になる。鉱山に出資し、発電所を持ち、コンビニを経営する。手数料商売から事業経営へ移りました。
人材紹介にも同じ問いがあります。仲介だけで価値を出し続けられるか。商社の答えは「その事業の当事者になる」ことでした。
総合商社はひとくくりにされがちですが、出自も強い領域も違います。
| 会社 | 出自 | 強い領域 | 文化 |
|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 岩崎弥太郎の海運 | 資源・エネルギー | 組織で動く |
| 三井物産 | 国策としての設立 | 資源・機械・インフラ | 人の三井 |
| 伊藤忠商事 | 近江商人の行商 | 非資源・繊維・食料 | 商人の伊藤忠 |
| 住友商事 | 銅山からの多角化 | メディア・不動産・金属 | 浮利を追わず |
| 丸紅 | 伊藤忠と同根 | 電力・穀物 | 選んだ領域で勝つ |
| 双日 | 鈴木商店の系譜 | 自動車・航空・化学 | 統合で生き残る |
| 豊田通商 | トヨタの商事部門 | 自動車・アフリカ | グループを基盤に外へ |
候補者に「商社志望」と言われたとき、どこを志望しているかで話が変わります。資源に賭けるのか、生活に近い事業に関わりたいのか。この区別ができると面談の質が上がります。
商社の収益は、大きくトレーディング(商取引)と事業投資に分かれます。前者は取引を作って差益や手数料を得る仕事、後者は出資先の経営に関わり企業価値を上げる仕事です。
| トレーディング | 事業投資 | |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | 取引先の開拓と条件の交渉 | 出資・経営参画・価値向上 |
| 必要な力 | 営業・交渉・与信の判断 | 財務・経営・現地での実行 |
| 時間軸 | 数か月〜数年 | 5〜10年 |
| 成果 | 取引の量と利益率 | 投資先の業績 |
近年は後者の比重が高まり、商社はコンサルやPEに近い仕事になっています。この変化を理解していない候補者は、志望動機がずれます。
資源の権益を持つということは、資源価格の変動を業績が直接受けるということです。鉄鉱石や原油の価格が上がれば利益が急増し、下がれば減損が出る。
伊藤忠が非資源で評価されるのは、この変動が小さいからです。どの商社を選ぶかは、どの変動を引き受けるかの選択でもあります。
7社のどこか、トレーディングか事業投資かまで踏み込んでください。会社によって扱うものも仕事も違います。
商社は仲介から当事者へ移ることで不要論に答えました。人材紹介にも同じ問いがあります。
資源比率はその企業の業績がどれだけ外部要因で動くかを示します。
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