コーン・フェリーは、エグゼクティブサーチ(経営幹部の探索)で世界最大級の会社です。現在は幹部の採用だけでなく、組織設計、報酬制度、リーダー育成といった人事コンサルティングまで手がけています。
人を探す仕事は、なぜ組織を設計する仕事にまで広がったのか。会計事務所の一部門から始まった来歴を追うと、人材紹介という仕事の「その先」が見えてきます。
レスター・コーンはUCLAでMBAを取得し、ハーバード・ビジネス・スクールで博士課程に進んだのち、大手会計事務所ピート・マーウィック・ミッチェル(現KPMG)に経営コンサルタントとして入りました。1963年には西海岸のエグゼクティブサーチ部門を任され、のちにパートナーになっています。
リチャード・フェリーはオハイオ出身で、ケント州立大学で会計を学び、自ら共同創業したものを含む複数の会計事務所を経て、1965年にピート・マーウィックに入りました。やがてサーチの仕事に移り、コーンの後任として西海岸のサーチ部門を率い、1969年にパートナーになります。
当時、経営幹部の探索は、会計事務所やコンサル会社の付随サービスとして行われることが多い仕事でした。
2人とも社内で成功していましたが、大きな組織で働くことの制約に不満を募らせていました。会計事務所の中では、サーチはあくまで本業の周辺にある仕事です。独立性や、利益相反の問題も抱えやすい立場でした。
1969年11月、2人は独立して自分たちの会社を作ります。それがKorn/Ferryの始まりです。探す対象を経営幹部に絞り、サーチを専門の仕事として確立することをめざしました。
翌1970年には、不動産業界に特化した最初の専門部門を作っています。業界ごとに専門のチームを置く形は、今のサーチファームの基本になっています。
多くの人材紹介は、登録した求職者の中から候補を探す仕事です。エグゼクティブサーチは違います。今の会社で活躍している人を、こちらから探しに行く仕事です。
| 一般的な人材紹介(成功報酬型) | エグゼクティブサーチ(リテイナー型) | |
|---|---|---|
| 対象 | 登録している求職者が中心 | 転職を考えていない現職の幹部も |
| 報酬 | 採用が決まったときに支払う | 依頼時から段階的に支払う |
| 報酬の目安 | 年収の3割前後が多い | 初年度報酬の3割程度とされる |
| 依頼主との関係 | 求人票をもとに動く | 経営課題から「誰を探すか」を定義する |
対象は限られ、報酬も高い。その分、依頼主の経営課題を理解していなければ、誰を探すべきかを定義できません。ここから、採用の相談が経営の相談へと広がっていく道が開けます。
1990年代後半、同社はサーチの外側に事業を広げ始めます。1998年には、ウォール・ストリート・ジャーナルと組んで、ミドル層向けのネット採用サービスFuturestepを始めました。のちに、企業の採用業務を丸ごと請け負うRPO(採用代行)の事業に育っています。
1999年にニューヨーク証券取引所に再上場すると、世界各地のサーチ会社を買収して拠点を広げました。2000年代には、リーダーシップ開発の知見を持つ会社も取り込んでいます。
大きな転機が、2015年のヘイグループの買収です。ヘイグループは、職務評価や報酬制度の設計で知られる人事コンサルティング会社でした。これによりコーン・フェリーは、誰を採るかだけでなく、どう評価し、どう報い、どう育てるかまで扱う会社になりました。
コーン・フェリーは1973年、東京に日本法人を設立しました。日本でも、経営幹部やスペシャリストの採用支援と、人事制度・リーダー育成のコンサルティングを行っています。
日本の転職市場では、ヘッドハンターとして働くキャリアの代表的な選択肢の一つです。人材紹介会社で経験を積んだエージェントが、より上位の層を扱うサーチファームへ移る道は、キャリアの一つの到達点として語られることがあります。
同じ「人を紹介する仕事」でも、外資系の紹介会社であるマイケル・ペイジやロバート・ウォルターズ、日系のJACリクルートメントとは、扱う層も報酬の形も違います。比べて読むと、サーチと紹介の違いが整理できます。
コーン・フェリーの来歴は、候補者に説明する材料であると同時に、エージェント自身のキャリアを考える材料にもなります。
成功報酬型の紹介は、採用が決まれば仕事が終わります。しかし依頼主の本当の課題は、採った人が活躍できる組織になっているかにあることが少なくありません。評価制度、報酬、育成。紹介の先にある課題まで話ができるかどうかが、単価と関係の深さを決めます。
「このポジションの人が1年後に活躍しているために、評価や報酬、受け入れ体制で何が必要ですか」と依頼主に聞けるか。サーチが組織の相談に広がった理由は、この一言に集約されます。
コーン・フェリーは1969年、会計事務所でエグゼクティブサーチを率いていた2人が独立し、経営幹部の探索を専門の仕事として確立した会社である。1973年に日本へ進出し、1999年にニューヨーク証券取引所に再上場したのち買収を重ね、2015年のヘイグループ買収で報酬・評価・育成まで扱う会社になった。人を探す仕事が組織の設計まで広がる道筋を示している。