デザイナー職の求人で最も多いミスマッチが、「デザイナー」という言葉の指す範囲が違うことです。UIを設計する人、ブランドを作る人、バナーを量産する人:同じ職種名でも仕事はまったく違います。非デザイナーのエージェントが最初に持つべきは、この解像度です。
※年収レンジは転職エージェント各社の調査・求人票の記載に基づく目安です。企業規模・業界・地域・個人の経験により実際の水準は異なります(2026年9月時点)。
年収レンジ
400〜1,300万円
UI/UX・プロダクトが高く、Web・グラフィックは入口
5領域
UI/UX・グラフィック・ブランド・Web・プロダクト
成果物も働く場所も違う
見るべきは
プロセス
完成品より「なぜその形にしたか」
ユーザー
使う人・見る人
デザイナー
UI/UX・ブランド・プロダクト
PdM・開発・マーケ
要件を出す人・実装する人
※年収レンジは転職エージェント各社の調査・求人票に基づく目安、構成比は求人ベースの編集部概算です。企業規模・業界・個人の経験により実際の水準は異なります(2026年9月時点)。
①UI/UXデザイナー。アプリやWebサービスの画面設計と、体験の設計。情報設計、画面遷移、インタラクション。近年最も求人が多い領域です。②グラフィックデザイナー。広告、パッケージ、印刷物。ビジュアル表現そのものが成果物です。
事業会社と受託(制作会社・代理店)の違い
| 項目 | 事業会社(インハウス) | 受託(制作会社・代理店) |
|---|---|---|
| 扱うもの | 自社プロダクト1つを継続的に改善 | 多数のクライアント案件 |
| 評価される成果 | 数字(CVR・継続率)への貢献 | 表現の質、受賞歴、担当ブランド |
| 仕事の幅 | リサーチ・要件定義まで関わる | 制作に集中しやすい |
| スピード | 検証を繰り返す | 納期に対して仕上げる |
| 向いている人 | プロダクトを育てたい人 | 多様な表現に関わりたい人 |
③ブランドデザイナー。ロゴ、VI(ビジュアルアイデンティティ)、ブランドガイドライン。企業の見え方を統合的に設計します。④Webデザイナー。サイト制作。コーディングまで担う場合と、デザインのみの場合があります。
⑤プロダクトデザイナー。UI/UXを含みつつ、プロダクトの方向性まで踏み込む役割。PdMに近い立ち位置で、事業会社に多い職種です(PdMの記事)。
求人票が「デザイナー募集」だけの場合、成果物は何か、誰と働くか、意思決定の範囲はどこまでか。この3つを確認すると領域が特定できます。
| 領域 | 主な成果物 | 年収レンジ(目安) | 働く場所 |
|---|---|---|---|
| UI/UX | 画面設計、プロトタイプ、情報設計 | 500〜1,000万円 | 事業会社・制作会社 |
| グラフィック | 広告、パッケージ、印刷物 | 400〜750万円 | 代理店・制作会社・メーカー |
| ブランド | VI、ガイドライン、ブランド戦略 | 600〜1,200万円 | 事業会社・ブランディング会社 |
| Web | サイトデザイン、LP | 400〜700万円 | 制作会社・事業会社 |
| プロダクト | プロダクト方針を含む体験設計 | 700〜1,300万円 | 事業会社(特にSaaS・スタートアップ) |
デザイナーのキャリアで最大の分岐が、事業会社か、制作会社・代理店かです。
制作会社・代理店。複数クライアントの案件を並行して回します。強みは幅と速度。多様な業界のデザインを短期間で数多く経験でき、表現の引き出しが増えます。弱点は作った後を見届けられないこと。納品して終わり、その施策が成果を出したかは分かりません。
事業会社。一つのプロダクトに深く関わります。強みは深さと責任。ユーザーの反応を見て改善を回せる。弱点は担当範囲が狭くなることと、社内調整の比重が大きいこと。
転職の流れは制作会社 → 事業会社が一般的です。逆は多くありません。ただし事業会社に移った人が「デザイン以外の業務(調整・資料作成)が多い」と感じるケースはあり、この現実を事前に伝えることが支援になります。
非デザイナーが最も困るのが、ポートフォリオの評価です。デザインの良し悪しは判断できない。それで構いません。見るべきは別の点です。
①プロセスが書かれているか。優れたポートフォリオには、完成品だけでなくなぜその形にしたかが書かれています。課題は何で、どんな案を検討し、なぜこれを選んだか。これが書ける人は、思考が言語化できています。
②成果が示されているか。「CVRが◯%改善」「離脱率が◯%減少」。デザインを事業成果と接続して語れる人は、事業会社で高く評価されます。逆に「きれいに作りました」で終わるポートフォリオは、制作会社向きです。
③担当範囲が明記されているか。チームで作ったものを個人の実績のように見せているケースがあります。「自分はどこを担当したか」が明確に書かれているかを確認します。
この3点はデザインの専門知識がなくても判断できます。むしろ企業の採用担当も、この観点で見ていることが多い。
デザイン職の市場で、需要が明確に伸びている領域を挙げます。
①UXリサーチャー。ユーザー調査を専門に担う職種です。デザインを描くのではなく、何を作るべきかの根拠を作る。SaaSや大手事業会社で独立したポジションになりつつあります。
②デザインシステム。複数プロダクトで一貫した体験を保つための、コンポーネントとルールの設計。組織が大きくなるほど必要性が上がるため、成長企業からの求人が増えています。
③デザインエンジニア。デザインと実装の両方を担う職種。FigmaからコードまでをつなぐUI実装ができる人材は希少で、単価も高くなります。
④AI時代のデザイン。生成AIによるビジュアル制作が普及するなか、量産型のデザイン業務は圧縮されつつあります。一方で、何を作るべきかを決める上流の設計や、AIの出力を判断・編集する能力の価値は上がっています(AIが変えた求人市場)。
候補者に伝えるべきは、「作る速度」ではなく「決める力」に価値が移っているという構造変化です。
デザイナー職はUI/UX・グラフィック・ブランド・Web・プロダクトの5領域に分かれ、求人票の言葉だけでは判別できない。事業会社と受託では幅と深さのトレードオフがあり、ポートフォリオは成果物ではなくプロセス・成果・担当範囲で判断できる。生成AIの普及により、作る速度より何を作るか決める力へ価値が移っている。
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