「営業経験5年」という言葉は、市場ではほぼ何も伝えていません。ルート営業の5年と新規開拓の5年、有形商材と無形商材、法人と個人。同じ営業でも、求められる能力と市場価値は別物です。この記事は営業を4つの軸で分解し、候補者の経験を正確に読み、正確に翻訳するための地図です。
※年収レンジは転職エージェント各社の調査・求人票の記載に基づく目安です。企業規模・業界・商材・個人の実績により実際の水準は大きく異なります(2026年9月時点)。
年収レンジ
450〜1,500万円
商材の単価と利益率で天井が決まる
分岐点
新規か既存か
求められる資質が正反対
出口
5方向
企画・マーケ・人事・CS・事業開発
顧客
課題と予算を持つ
営業
IS / FS / CS / 一気通貫
自社(商品・開発・マーケ)
提供する側
※年収レンジは転職エージェント各社の調査・求人票に基づく目安、構成比は求人ベースの編集部概算です。企業規模・業界・個人の経験により実際の水準は異なります(2026年9月時点)。
営業職の候補者を支援するとき、最初にやるべきは経験の分解です。「営業を何年」では、企業側は何も判断できません。実務上、次の4軸で分解すると解像度が上がります。
商材と顧客で変わる、営業の「型」
| 軸 | 一方 | もう一方 | 企業が読み取ること |
|---|---|---|---|
| 商材 | 有形(機械・製品・不動産) | 無形(SaaS・広告・人材・金融) | 無形は課題を作る力、有形は製品知識と納期管理 |
| 顧客 | 法人(BtoB) | 個人(BtoC) | 法人は複数の意思決定者を動かした経験があるか |
| 単価 | 数十万円・短期・多件数 | 数千万円・長期・少件数 | 高単価は稟議と役員折衝の経験として評価される |
| 相手の役職 | 担当者 | 部長・役員・経営者 | 誰に会っていたかで、営業の格が判断される |
※同じ「営業経験5年」でも、この4軸の組み合わせで企業の評価はまったく変わります。
営業職の4分類。求められる資質と、転職での評価のされ方
| 分類 | 代表的な仕事 | 求められる資質 | 転職市場での読まれ方 |
|---|---|---|---|
| 新規開拓(ハンター) | テレアポ・飛び込み・イベント | 断られ続けても動ける胆力、初対面での関係構築 | 業種を超えて需要が高い。SaaS・人材・広告で特に評価 |
| 既存深耕(ファーマー) | 定期訪問・アップセル・課題解決 | 信頼の維持、顧客内の横展開、長期の関係設計 | カスタマーサクセス・アカウント営業へ接続しやすい |
| ルート営業 | 決まった顧客への納品・フォロー | 正確さ、関係維持 | 新規志向の企業には接続しにくい。CS・業務職への転身が現実的 |
| 内勤営業(IS) | 電話・メールでの商談化 | 数をこなす耐性、トークの改善サイクル | The Model型企業の入口。FSへの昇格ルートがある |
①新規か、既存か。新規開拓は「断られ続ける環境で、ゼロから関係を作る力」、既存深耕は「関係を維持しながら、取引を広げる力」。求められる資質が正反対で、企業は必ずどちらかを求めています。
②有形か、無形か。有形商材(機械、製品、不動産)は「モノの価値」を説明する営業、無形商材(SaaS、広告、人材、金融)は「課題解決の価値」を説明する営業。無形営業の経験は、業界を超えて評価されやすい傾向があります。
③法人か、個人か。法人営業(BtoB)は組織の意思決定を動かす仕事、個人営業(BtoC)は一人の感情と判断を動かす仕事。プロセスの長さと、必要な提案の型が違います。
④単価と受注期間。数万円の商材を月100件決める営業と、数千万円の案件を年3件決める営業では、日々の動き方も評価軸もまったく違います。高単価・長期の営業経験は、それ自体が希少性になります。
| 軸 | 一方 | もう一方 | 市場での読まれ方 |
|---|---|---|---|
| ①新規/既存 | 新規開拓 | 既存深耕・ルート | 新規経験者は業種を超えて需要が高い |
| ②有形/無形 | 製品・機械・不動産 | SaaS・広告・人材・金融 | 無形営業は課題解決型として評価されやすい |
| ③法人/個人 | BtoB | BtoC | 法人営業は組織の意思決定を動かす経験として評価 |
| ④単価/期間 | 低単価・短期・多件数 | 高単価・長期・少件数 | 高単価経験はそれ自体が希少性 |
営業職を語るうえで、いま避けて通れないのがThe Model型の分業です。SaaS業界で広まった考え方で、営業プロセスをIS(インサイドセールス)・FS(フィールドセールス)・CS(カスタマーサクセス)に分け、それぞれを専門職として置きます(The Model型組織とは)。
この分業は、営業という職種の定義を変えました。かつては「一人で見込み客を探し、提案し、契約し、フォローする」のが営業でした。いまはどの工程を担ったかが経歴の中身になります。
IS(インサイドセールス)。見込み客を発掘し、商談機会を作る。電話・メール・オンラインが中心で、行動量と初期接点の質が問われます(インサイドセールスの実像)。FS(フィールドセールス)。商談から契約まで。提案力と交渉力の中核です。CS(カスタマーサクセス)。契約後の活用支援と継続・拡大。解約を防ぎ、単価を上げる仕事です。
面談では「一気通貫でやっていたか、分業のどこを担っていたか」を必ず確認します。一気通貫の経験者は中小・ベンチャーで、分業の経験者は同じ分業体制の企業で、それぞれ評価されやすい構造があります。
営業の年収は、個人の実力だけでなく扱う商材の単価と利益率で天井が決まります。同じ実力でも、業界を変えるだけで年収レンジが大きく動くのが営業職の特徴です。
特にインセンティブの比率が業界によって大きく異なります。金融・不動産・人材は成果連動の比率が高く、メーカー・SIerは固定給の比率が高い。年収の額面だけでなく、その構成を確認することが支援の基本です(内定承諾書と労働条件の確認)。
| 業界・商材 | 年収レンジ(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| SaaS・IT(無形・法人) | 500〜1,000万円 | The Model型が主流。ISから始める入口が多い |
| 人材(無形・法人/個人) | 450〜1,200万円 | 両面型は高還元。実力差が年収に直結 |
| 広告・メディア | 450〜900万円 | 提案力と業界知識で差がつく |
| 金融(証券・保険) | 500〜1,500万円 | 成果連動が強く、上下の幅が最も大きい |
| 不動産(売買・投資) | 450〜1,500万円 | 高単価・成果連動。実力で大きく動く |
| メーカー(有形・法人) | 500〜900万円 | 固定給中心で安定。技術理解が武器 |
| SIer・IT機器 | 500〜950万円 | 長期案件。関係構築と提案の型が要る |
| コンサルティング | 700〜1,500万円 | 営業専任は少なく、パートナー層が担う(解説) |
営業経験は、キャリアの出口が最も広い職種の一つです。理由は顧客の一次情報を持っているから。顧客が何に困り、何を言い、なぜ買わないかを知っている人材は、あらゆる企画部門で価値があります。
①営業企画。最も地続きの転身。営業の実績を「仕組み」の言葉に翻訳できれば、営業戦略・SFA設計・KPI管理の側に回れます(営業から営業企画へ)。
②マーケティング。顧客の課題を聞き出す経験は、顧客インタビューやペルソナ設計に直結します(営業からマーケティングへ)。
③人事・採用。採用は「候補者を口説く営業」であり、構造が同じです(営業から人事へ)。④カスタマーサクセス。SaaS業界の需要が大きく、既存深耕の経験が直接活きます。⑤事業開発・アライアンス。法人営業で培った意思決定者との対話力が武器になります。
いずれの出口でも鍵になるのは、営業実績を「頑張りました」ではなく「再現できる構造」として語れるかです(営業の再現性を作る・The Process.)。
営業職の将来について、正直に整理します。
消えていく営業。情報を届けるだけの営業、定型的な提案を繰り返す営業、顧客が自分で調べれば分かる説明をする営業。これらはWebとの比較検討とAIによる情報提供に置き換わりつつあります。
残る営業。顧客自身が気づいていない課題を見つける営業、複数の意思決定者を動かす営業、信頼によって「この人から買いたい」と思わせる営業。情報の提供ではなく、判断の支援に価値が移っています(AI時代に営業の価値は残るのか)。
エージェントが候補者に伝えるべきは、「営業職がなくなる」のではなく「営業の中身が変わる」という構造です。そして候補者の経験が、消える側なのか残る側なのかを一緒に見極めることが、この職種の支援の核心になります。
営業職の候補者の実像を掴む質問を挙げます。
①「新規と既存、比率はどれくらいでしたか」。第1軸の確認。②「商材の単価と、受注までの期間は」。第4軸の確認。数字で答えられるかも見ます。③「見込み客の発掘から契約後のフォローまで、どこを担当していましたか」。The Model型か一気通貫かの確認。
④「達成率ではなく、達成できた理由を教えてください」。再現性の確認。「頑張った」しか出てこない候補者は、翻訳の支援が必要です。⑤「顧客から一番よく言われた不満は何ですか」。顧客の一次情報を持っているかの確認。ここに具体的に答えられる候補者は、企画系への転身も視野に入ります。
この5問で、営業経験の中身はほぼ特定できます。職務経歴書の作成は営業職の職務経歴書ガイド、面接での実績言語化は成果の要因を作るをあわせてご覧ください。
コンサルファームの営業職の具体例はベイカレントの営業職(セールス)で詳しく解説しています。
営業経験は新規/既存・有形/無形・法人/個人・単価と期間の4軸で分解して初めて市場価値が読める。The Model型の分業により「どの工程を担ったか」が経歴の中身になり、年収は個人の実力より商材の単価と利益率で天井が決まる。顧客の一次情報を持つ経験は企画・マーケ・人事・CS・事業開発への出口になり、AI時代には情報提供ではなく判断支援に価値が移っている。
記事の内容を前提にして、あなたの状況に合わせた答えをAIに出させます。質問を入れて「ChatGPTで相談」または「Claudeで相談」を押すと、記事の要点と質問がセットになった状態で開きます。