「おすすめのCRMツールはありますか?」。人材紹介会社の方から、よくいただく質問です。ただ、正直にお答えすると、どの会社にとっても一番、というCRMはありません。
選ぶべきCRMは、その会社がどの企業フェーズにいるのか、どの領域で支援しているのか、そして今どこに課題を感じているのかによって変わります。立ち上げたばかりの少人数の会社と、20名を超えてRA・CAを分業している会社とでは、求める機能も、導入にかけられる手間もまったく違います。ハイクラスの候補者を両面で深く支援する会社と、若手の方と数多く面談する会社とでも、重視すべきポイントは異なります。
私自身、エージェントとして、そして事業をつくる側として、CRM選びでは遠回りをしてきました。その経験から、この記事では人材紹介のCRMを4つのグループに整理したうえで、フェーズ・支援領域・課題ごとに、どこを見て選べばよいかをまとめています。後半では、私が実際におすすめしているCRMも紹介します。
人材紹介会社が使う主なCRMと、無料で始められる道具を、4つのグループに分けました。同じ「CRM」でも、グループによって導入の手間と自由度が大きく違います。
海外の人材紹介会社で広く使われるCRM。外資系の候補者や、海外拠点とのやり取りが多い会社に向く



選ぶときに見る1点日本語の画面とサポートが、どこまで用意されているか
営業管理やデータベースの道具を、人材紹介向けに自社で組み立てて使う。自由度が高い反面、作る手間がかかる



選ぶときに見る1点作り込みと保守を、誰が担当するか
お金をかけずに今日から始められる道具。立ち上げ期はこれで十分。ただし候補者が50人を超えたら、CRMへの引っ越しを考える合図

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無料プラン選ぶときに見る1点CRMに移すとき、データをそのまま持っていけるか
人材紹介のCRMは、一般的な営業向けのCRMと違い、「候補者」と「企業・求人」の両方を管理し、その組み合わせで選考を追うのが特徴です。主な機能は次の8つです。
経歴、希望、面談の記録、やり取りの履歴。企業側の担当者や求人とも結び付けて管理する。人材紹介で見るポイント:RAとCAが同じ候補者を見られるか
推薦から書類、面接、内定まで、候補者と求人の組み合わせごとに段階を追う。人材紹介で見るポイント:1人の候補者が複数社を受けても追えるか
面談や面接の候補日を出し、確定した予定をCRMに残す。人材紹介で見るポイント:候補者がスマホから日程を選べるか
入社が決まった案件の売上、請求、入金予定を管理する。人材紹介で見るポイント:入社日と入金日を結び付けて、入金漏れに気づけるか
候補者の条件に合う求人、求人に合う候補者を探す。人材紹介で見るポイント:条件を入れ直さずに候補が並ぶか
キャリアシート、推薦文、求人票、請求書などを作り、候補者や求人と結び付けて残す。人材紹介で見るポイント:企業ごとに違う書式に合わせられるか
LINEやメールで、候補者に連絡や求人の案内を送る。人材紹介で見るポイント:誰に何を送ったかが履歴に残るか
スカウト媒体や自社サイトから、候補者や応募の情報を取り込む。人材紹介で見るポイント:手で写す作業がなくなるか
すべての機能が最初から必要なわけではありません。立ち上げ期は01・02・07、拡大期は03・05・08、組織化期は04・06の重要度が上がっていきます。
カオスマップに載せた主なCRMの、料金と特徴をまとめました。料金は各社の公式サイトで公開されている情報です。
候補者の管理から追客、AI、数字までが1つのデータでつながる
人材紹介の業務の型が組み込まれていて、標準化しやすい

初期費用をかけずに始められ、派遣の業務にも広げられる

人材紹介の一連の業務を、請求まで1つで管理できる

海外の人材ビジネスの標準的な仕組みに沿って運用できる

複数の国や言語にまたがる人材ビジネスを1つで管理できる

人材紹介に合わせて作り込めば、会社全体の基盤になる

まず無料で顧客管理を始め、必要になったら有料の機能を足せる

自社の業務に合わせた画面を、プログラミングなしで作れる
料金・機能・お試しの内容は、各社の公式サイトと公開情報にもとづく(2026年10月時点)。表記のない料金は税抜。オプションや契約条件で変わるため、導入前に各社に確認してほしい。
CRMのデモでは、どの会社もたくさんの機能を見せてくれます。迷ったら、今いちばん困っている「課題」に関係する機能だけを、自社のデータで試してください。
面談のメモ、送った求人、やり取りが、候補者ごとに1画面で見られるか
登録の直後から、CRMの中で連絡と日程調整まで完結できるか
面談の記録や推薦文の下書きを、CRMの中で作れるか
条件を入れ直さなくても、合いそうな求人が並ぶか
スカウト媒体やフォームから、候補者情報をそのまま取り込めるか
誰のどの段階で止まっているかが、開いてすぐ分かるか
設定に時間をかけず、契約した日から回ることがいちばん大事。スプレッドシートで始めても構わないが、候補者が50人を超えたら引っ越しの合図。
面談に来ない人と、面談後の入力が目立ち始める時期。連絡とAIの機能がCRMの中にあるかで、1人あたりの面談数が変わる。
人が増えると「同じ言葉を違う意味で使う」問題が出てくる。入力のルール、権限、ほかのシステムとの連携をそろえることが、機能の多さより大事になる。
同じ人数でも、どの領域で支援しているかによって、CRMに求めるものは変わります。
| 支援の領域 | CRMで重視したいこと |
|---|---|
| ハイクラス・両面で深く支援 | 候補者ごとの長いやり取りと、企業との関係の履歴を1か所で追えること |
| 若手・未経験で多くの方と面談 | LINEでの連絡、日程調整、面談の記録を速く回せること |
| IT・医療など専門職 | 資格・スキル・経験年数などの条件で、求人とすばやく照らし合わせられること |
| 外資・グローバル | 英語の書類や、海外の企業・拠点とのやり取りを管理できること |
どのCRMを選んでも、最初に決めておかないと必ず困るのが選考のステータス(段階)の定義です。「面談済み」が、面談をしただけなのか、求人を提案したところまでなのか。人によって意味が違うと、どれだけ良いCRMを入れても数字が合わなくなります。
ステータスの一例。自社の業務に合わせて、言葉と「次の段階に進む条件」を決めておく。
| 決めておくこと | 例 |
|---|---|
| 段階の名前と順番 | 上の10段階のように、全員が同じ言葉を使う |
| 次の段階に進む条件 | 「推薦」は企業に書類を送った日。「面談実施」は30分以上話した日 |
| 必ず入れる項目 | 最初は5つまで(希望職種・希望年収・転職時期・現年収・次の連絡日) |
| 止まった理由の選び方 | 辞退・見送りの理由を自由記入にせず、選択肢から選ぶ |
特に大事なのが、辞退や見送りの理由を選択肢で残すことです。自由記入では後から集計できません。「年収」「勤務地」「他社で決定」など、理由がそろって初めて、どこに手を打つべきかが見えてきます。
ステータスがそろうと、CRMで歩留まり(次の段階に進んだ割合)が見えるようになります。最初は、次の5つだけを毎週見れば十分です。
| 数字 | 計算のしかた | 低いときに疑うこと |
|---|---|---|
| 面談実施率 | 面談実施 ÷ エントリー | エントリーからの最初の連絡が遅くないか。日程調整に手間がかかっていないか |
| 推薦率 | 推薦 ÷ 面談実施 | 提案した求人が、候補者の軸とずれていないか |
| 書類通過率 | 書類通過 ÷ 推薦 | 推薦文で、企業が知りたいことに答えられているか |
| 内定率 | 内定 ÷ 面接 | 面接の準備と、企業からの評価の伝え方 |
| 承諾率 | 承諾 ÷ 内定 | 条件のすり合わせと、承諾までの伴走 |
たとえば、エントリーが100名で、そのうち面談を実施できたのが70名なら、面談実施率は70%です。残りの30名は、面談の前に離れてしまったことになります。この数字が低いなら、スカウトを増やしてエントリーを集めるより先に、エントリーから最初の連絡までの時間と、日程調整の手間を見直す方が効きます。どの数字が低いかで、打ち手はまったく変わります。KPIの設計はエージェントのKPI設計でも詳しく扱っています。
デモで見る機能の多さは、ほとんど判断の役に立ちません。見るべきは、自社の1日の動きが、そのまま乗るかどうかです。
見落としやすいのが、個人情報の守り方です。人材紹介会社は、職業安定法で求職者の個人情報を適正に管理することが求められています。誰がどの候補者の情報を見られるか(権限)、誰がいつ見たか(記録)を、CRMの中で管理できるかも確かめておきましょう。
CRMの費用は、月額の料金だけを比べると判断を誤ります。実際にかかるのは、次の4つの合計です。
見落とされがちなのが、4つ目の定着までの時間です。エージェント1人が1日1時間、慣れない画面に時間をとられれば、5人で1か月に100時間近くになります。月額が少し高くても、すぐに使いこなせるCRMの方が、結果として安くつくことは珍しくありません。
| 人材紹介向けCRM | 汎用のCRM・データベース | |
|---|---|---|
| 使い始めるまで | 最初から画面がそろい、すぐ使える | 項目や画面を自社で作る時間が必要 |
| 自由度 | 人材紹介の業務に合わせて作られている分、型は決まっている | 何でも作れる。ほかの業務とも同じ道具で管理できる |
| 運用の手間 | 提供元が改善・保守をしてくれる | 作った人が辞めると、誰も直せなくなりやすい |
| 合う会社 | 人材紹介が事業の中心で、早く回したい | 社内に作れる人がいて、独自の管理をしたい |
私のおすすめは、人材紹介が事業の中心なら、人材紹介向けのCRMから選ぶことです。汎用ツールで作り込んだ管理は、作った人が異動や退職をした途端に止まってしまうことがよくあります。業務の型が決まっている分、人材紹介向けのCRMの方が、新しく入ったエージェントも早く使いこなせます。
ここまで見てきたように、少人数の会社ほど「1つのCRMで、面談の前後から決定までを回せるか」が大切になります。その考え方で私がおすすめしているのが、株式会社エボルグが提供するEmpro(エンプロ)です。
おすすめする理由は3つあります。1つ目は、求職者の管理から追客、AI、KPIまでが1つのデータでつながっていること。ツールの継ぎ目で起きる転記や対応漏れがなくなります。2つ目は、LINEでの追客が標準で使えること。登録したのに面談に来ない求職者を、仕組みで動かせます。3つ目は、人材紹介の現場を知るチームが伴走してくれること。導入して終わりではなく、売上を伸ばすところまで一緒に考えてくれます。
人材紹介会社向けのワンストップCRM/MAです。求職者・求人・選考の管理(CRM)を土台に、LINE・メールの追客(MA)、AIによるマッチングと自動入力、KPIのダッシュボードまでを、ひとつのデータ基盤でつないでいます。CRMの中で連絡もAIも数字も完結するので、ほかのツールを足さずに回せます。
料金・機能は公式サイトの記載(2026年10月時点)にもとづきます。最新の情報は公式サイトでご確認ください。筆者(島田)が代表を務める株式会社Sync Ascentは、Emproを提供する株式会社エボルグとセミナーを共催しています。
CRMは、入れた日がゴールではありません。私がおすすめしている、導入から定着までの進め方です。
CRMそのものが悪かった、という失敗はほとんどありません。つまずくのは、たいてい入れ方です。
失敗デモで一番すごかったCRMを選び、現場が開かなくなった
防ぐトライアルは、一番忙しいエージェントに1週間使ってもらう
失敗管理したい項目を全部入れたら、誰も入力しなくなった
防ぐ必須は5項目まで。足りなくなってから増やす
失敗CRMの外に便利そうなツールを足すたびに、同じ情報を何度も打ち込むことになった
防ぐ足す前に「CRMとつながるか」だけは必ず確かめる
失敗ダッシュボードを作ったのに、誰も見ていなかった
防ぐ導入の日に、毎週その画面を開く会議の予定を先に入れる
CRMを入れる目的は、エージェントが候補者と企業と話す時間を取り戻すことです。導入して3か月たっても面談の時間が増えていなければ、選び方か入れ方のどこかを見直す合図だと考えてください。KPIの設計はエージェントのKPI設計でも詳しく扱っています。
出典・参考:各社の公式サイト・公開情報/株式会社エボルグ「人材紹介ツール カオスマップ」(2026年8月版、https://getempro.jp/recruitment-tool-map)。後半のEmproの紹介は、筆者の推奨によるものです。
CRM選びは、機能の比較から始めると迷子になる。始めるべきは「候補者が今どこで止まっているか」という問いだ。課題に関係する機能だけを自社のデータで試し、1つのCRMで回せる形を選ぶ。そして、機能の数ではなく、候補者と話す時間が増えたかで成果を測る。それが、遠回りしないためのいちばんの近道である。
記事の内容を前提にして、あなたの状況に合わせた答えをAIに出させます。質問を入れて「ChatGPTで相談」または「Claudeで相談」を押すと、記事の要点と質問がセットになった状態で開きます。