Datadogは、クラウドで動くシステムやアプリケーションの状態を監視するサービスの会社です。サーバー、データベース、アプリケーション、ログなどを一つの画面で見られるようにします。
この会社の出発点は、技術の課題というより人と組織の課題でした。2つのチームの「仲の悪さ」を製品にした来歴を追います。
オリビエ・ポメルとアレクシ・レ=コックは、フランスの理工系の名門エコール・サントラル・パリの学生時代に出会いました。2人はのちにニューヨークに渡り、教育向けのデータシステムを作るワイヤレス・ジェネレーションで、9年間ともに働きます。
ポメルは技術担当の副社長として開発チームを率い、数人から約100人の組織に育てました。レ=コックは、システムを止めずに動かす運用チームを率いていました。同じ会社で、2人は隣り合う2つのチームのトップだったのです。
ワイヤレス・ジェネレーションで、2人は一つの問題を毎日のように目にしていました。開発チームと運用チームの仲が悪いのです。開発は新しいコードを次々に出し、運用はシステムが止まると開発のせいにする。障害のたびに、両者は責任を押しつけ合いました。
2人は、その根本の原因を「同じ事実を見ていないこと」だと考えました。開発と運用は、それぞれ別の監視の道具を使っていて、お互いの見ている画面がつながっていなかったのです。
2010年、ワイヤレス・ジェネレーションがニューズ・コーポレーションに買収されたのを機に、2人は独立します。開発と運用が同じ画面を見て、同じ事実にもとづいて話せる道具。それを作るために、ニューヨークの小さな部屋でDatadogを始めました。社名は、前職の社内でデータベースにつけられていた呼び名に由来するといわれます。
当時の監視ツールの多くは、自社のサーバーに導入して使う、重くて高価なものでした。Datadogは、クラウドで使えるサービスとして、すぐに導入でき、すぐに使えることを重視しました。
ちょうど企業のシステムがクラウドに移り始めた時期でした。システムが細かく分かれ、数も変化も増えるほど、全体を一つの画面で見る必要が高まります。Datadogは、アマゾンやマイクロソフト、グーグルのクラウドなど、さまざまな環境とつながる仕組みを増やしながら成長しました。
| 開発チーム | 運用チーム | Datadogで変わること | |
|---|---|---|---|
| 関心 | 新しい機能を早く出す | システムを止めない | 同じ指標を見て判断する |
| 見ていた画面 | 開発用の道具 | 運用用の監視 | 一つの共通の画面 |
| 障害のとき | 運用のせいにする | 開発のせいにする | 事実にもとづいて原因を探す |
Datadogは、サーバーの監視から始めて、アプリケーションの性能、ログ、セキュリティへと製品を広げていきました。「一つの画面で見る」という考え方を、扱う範囲ごと大きくしていったのです。
2019年9月、同社はナスダックに上場します。上場の直前には大手IT企業から買収の打診があったと報じられましたが、創業者たちは独立を選びました。2人は今もCEOとCTOとして会社を率いています。
「開発と運用の対立」は、のちにDevOps(デブオプス)という言葉とともに、ソフトウェア業界全体の課題として広く語られるようになりました。Datadogは、その課題を道具の側から解いた会社の一つです。
Datadogの成長を支えたのは、導入の手軽さでした。エンジニアが自分で試し、すぐに効果を確かめられる。そこから同じ会社の別のチーム、別のシステムへと使う範囲が広がっていきます。営業が上から売り込むのではなく、現場のエンジニアが入口になる売り方です。
出所:Datadog 2025年第4四半期の決算説明。いずれも前年より上昇。小さく入った顧客が、使う製品を増やしていく様子がわかる。
もう一つの武器が、つながる先の多さです。主要なクラウド、データベース、開発ツールなど、500を超える製品と標準でつながる仕組みを用意してきました。どんな環境を使っていても、すぐに一つの画面にまとめられる。これが「一つの画面で見る」という約束を支えています。
| 段階 | 顧客の中で起きること |
|---|---|
| 入口 | 一つのチームがサーバーの監視を試す |
| 拡大 | 他のチームやシステムにも広がる |
| 深化 | アプリケーション監視、ログ、セキュリティも使い始める |
| 定着 | 開発・運用・セキュリティの共通の画面になる |
出所:Datadogの年次報告・公開資料。数値は公表時点のもの。
出所:Datadog 年次報告。上場の年から6年で約9倍。
2025年の売上は34億ドルを超え、社員は約8,100人になりました。ニューヨークの小さな部屋から始まった会社が、15年でここまで広がっています。2015年にはパリに研究開発の拠点を置き、創業者たちの出身地との縁も保っています。
市場の変化も追い風でした。システムがクラウドに移り、小さな部品の組み合わせで作られるようになるほど、全体を見渡すことの難しさと価値が増していきます。複雑になるほど必要とされる道具を作った、という点に、この会社の強さがあります。
Datadogが切り開いた「監視」の市場には、多くの会社が参入しています。データ基盤のSnowflakeも、直近で監視の会社を買収してこの領域に入りました。データを保管する側と、システムを見張る側の境目は、AIの時代に少しずつなくなりつつあります。
出所:Datadog 2025年の年次報告・決算説明。
それでもDatadogが強みを保っているのは、開発・運用・セキュリティのチームが毎日開く画面になっているからです。一度チームの共通の言葉になった道具は、簡単には置き換わりません。創業の動機だった「チームの間をつなぐ」ことが、そのまま競争の土台になっています。
「Datadogは、開発と運用がお互いを責め合う状況を、同じ画面を見られる道具で解いた会社です。技術だけでなく、チームの間をつなぐ役割に関心がある人に向いています。」
運用やSRE(サイト信頼性エンジニアリング)の経験を持つ候補者には、チームの間の摩擦を減らした経験が評価されやすいことを伝えられます。
こうした経験は、エンジニア以外の職種でも使えます。異なる立場の人に、同じ事実を見せることは、エージェントが候補者と企業の間に立つときにも大切な考え方です。
Datadogは2010年、前職でそれぞれ開発と運用のチームを率いていたオリビエ・ポメルとアレクシ・レ=コックが、両者の対立の原因を「同じ事実を見ていないこと」だと考えて創業した会社である。開発と運用が同じ画面を見られるクラウドの監視サービスを作り、クラウドの普及とともに監視からログ、セキュリティへと広がって、2019年に上場した。