Snowflakeは、企業が持つ大量のデータをクラウドの上に集めて分析するための基盤を提供する会社です。売上や顧客、在庫などのデータを一か所にまとめ、部門や会社をまたいで使えるようにします。
データベースの世界は、長くオラクルなどの大手が支配してきました。そのオラクルで中心的な役割を担っていた技術者が、なぜ外に出て、どうやって新しい基盤を作ったのかを追います。
ブノワ・ダジェビルとティエリー・クルアネスは、フランス出身の技術者で、オラクルで長くデータベースの設計に携わってきました。データベースがどう動き、どこに限界があるかを、誰よりもよく知る立場です。
マルチン・ジュコフスキは、オランダで分析用の高速なデータベースを作る会社を共同で立ち上げた技術者でした。3人はそれぞれ、既存のデータベースの内側と限界を知り尽くしていました。社名は、スキー好きだった創業者たちが雪を好んだことに由来するといわれます。
従来のデータベースは、データを保管する場所と、それを処理する計算の力が一体になっていました。データが増えれば計算も重くなり、分析したい人が増えれば取り合いになる。力を足すには、高価な機械を丸ごと増やすしかありませんでした。
一方、クラウドでは、保管と計算を別々に、必要な分だけ借りられます。3人は、既存のデータベースをクラウドに載せ替えるのではなく、クラウドの性質を前提に一から設計し直すことを選びました。
データは一か所に保管したまま、分析したい部門ごとに計算の力を別々に立ち上げる。使い終われば止め、使った分だけ払う。これなら、部門同士が計算の力を奪い合うこともありません。
Snowflakeの成長で特徴的なのは、技術を作る創業者と、会社を広げる経営者の役割分担です。創業者たちは技術の中心に残り、会社の経営は外から招いた経験豊富なCEOに任せました。
2014年には、マイクロソフトでサーバー事業を率いたボブ・マグリアがCEOに就き、製品を世に出します。2019年には、他のソフトウェア会社を上場に導いた実績を持つフランク・スルートマンがCEOを継ぎ、2020年9月の上場を率いました。上場では多額の資金を集め、史上最大級のソフトウェアIPOとして注目されました。
データを一か所に集めると、そこに部門や会社をまたいだデータの共有が生まれます。Snowflakeは、企業同士が安全にデータをやり取りできる仕組みにも広げ、単なる保管場所からデータのやり取りの場へと役割を変えていきました。
Snowflakeの売り方には、もう一つの特徴があります。多くのソフトウェア会社が、利用者1人あたりの月額料金で売るのに対し、Snowflakeは使った計算の量に応じて料金がかかる形をとっています。顧客は一定額を前払いで契約し、実際に使った分がそこから差し引かれていきます。
出所:Snowflake 2026年1月期の年次報告。
この形では、顧客がデータを多く使うほど売上が伸びます。2026年1月期には、売上の約97%が既存の顧客から生まれ、既存顧客の支払いは前年より25%増えました(売上継続率125%)。新しい顧客を取ることより、今の顧客にもっと使ってもらうことが成長の中心にあります。
| 利用者数に応じた月額課金 | Snowflake(使った分だけ) | |
|---|---|---|
| 売上が伸びる条件 | 使う人が増える | データの利用が増える |
| 顧客にとっての利点 | 費用が読みやすい | 使わなければ払わない |
| 会社にとっての課題 | 解約を防ぐ | 景気で利用が減ると売上も減る |
出所:Snowflake 2026年1月期の決算発表・年次報告。数値は公表時点のもの。
出所:Snowflake 年次報告。各年1月末に終わる会計年度。上場前年から5年で約14倍。
2026年1月期の第4四半期の売上は12.8億ドルで、前年同期より30%増えました。年間100万ドルを超えて払う顧客は733社で、この層が製品売上の約7割を占めています。顧客の総数は1万2千社を超えます。
契約は結んだものの、まだ売上として計上していない金額も97.7億ドルに達しました。顧客が数年分の利用を前もって約束していることを示す数字です。
生成AIの時代に入り、Snowflakeは自らを「AIデータクラウド」と呼ぶようになりました。企業のデータがすでにSnowflakeの上にあるなら、AIもそのデータの近くで動かせばいい、という考え方です。
同社はAnthropic、OpenAI、グーグルなどの大規模言語モデルを、自社の基盤の上から安全に使えるようにしています。2024年には、グーグルで広告事業を率いた経験を持つシュリダー・ラマスワミがCEOに就き、AIへの対応を加速させました。直近では、システム監視の会社を買収し、Datadogが強い領域にも足を踏み入れています。
創業者たちが2012年に下した「保管と計算を切り離す」という判断は、データがどこにあり、誰が使えるかが競争力を決めるAIの時代に、改めて意味を持つようになりました。日本では2019年に日本法人が設立されています。
| 従来のデータベース | Snowflake | |
|---|---|---|
| 置き場所 | 自社のサーバー | クラウド |
| 保管と計算 | 一体 | 切り離されている |
| 増やし方 | 高価な機械を丸ごと増やす | 必要な計算の力だけを足す |
| 支払い | 先に買う | 使った分だけ |
同じようにクラウドの時代に生まれたデータ関連の会社には、DatabricksやDatadogがあります。あわせて読むと、クラウドがソフトウェアの作り方をどう変えたかが見えてきます。
「Snowflakeは、オラクルでデータベースを作っていた人たちが、クラウドを前提に一から設計し直した会社です。古い仕組みの延長ではなく、新しい前提で作る経験を積みたい人に向いています。」
データエンジニアやデータ基盤の経験を持つ候補者には、クラウド前提の設計に関わった経験が市場価値を大きく左右することを伝えられます。
Snowflakeは2012年、オラクルでデータベースを設計していた2人と分析データベースの技術者が創業した会社である。データの保管と計算を切り離し、クラウドの性質を前提に一から設計した基盤で、使った分だけ払うデータ分析を可能にした。技術は創業者、経営は招いたCEOという分担で成長し、2020年に史上最大級のソフトウェアIPOを果たした。