契約社員や派遣の候補者を支援するとき、無期転換ルールの理解は必須です。最大の誤解が「無期転換すれば正社員になれる」というもの。無期転換で変わるのは契約期間だけで、待遇や職務は原則そのままです。
※本記事は一般的な制度の解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。判断に迷う場面では、社会保険労務士・弁護士・行政書士などの専門家、または所管の行政機関にご確認ください(2026年9月時点の情報に基づきます)。
有期労働契約(期間の定めのある契約)で働く人について、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込む権利を得ます。労働契約法に基づくルールです。
重要な点を3つ。①申込みは労働者の権利。使用者が自動的に転換するのではなく、労働者が申し込むことで成立します。使用者はこの申込みを断ることができません。②通算は同一使用者との契約。会社が変われば通算されません。③クーリング期間。契約と契約の間に一定期間以上の空白があると、それ以前の期間は通算されなくなります。
そして最も誤解されるのが次の点です。
無期転換によって変わるのは、契約期間の定めがなくなることだけです。
賃金、職務内容、勤務地、労働時間といった労働条件は、別段の定めがない限り、直前の有期契約と同一のまま引き継がれます。つまり「無期契約の契約社員」という状態になるのが原則です。正社員と同じ待遇になるわけではありません。
もちろん、企業によっては無期転換を機に正社員登用の仕組みを整えている場合もあります。しかしそれは企業が独自に設けた制度であって、法律上の効果ではありません。
候補者がここを誤解したまま「あと2年働けば正社員になれるので、それまで待ちます」と判断しているケースがあります。その会社の無期転換後の処遇がどうなるのかを確認しないまま待つのは、キャリアの機会損失につながりかねません。エージェントは、この事実を正確に伝える立場にあります。
| 項目 | 無期転換で変わるか | 備考 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 変わる(期間の定めがなくなる) | これが無期転換の効果 |
| 賃金 | 原則変わらない | 別段の定めがあれば変更され得る |
| 職務内容 | 原則変わらない | 同上 |
| 勤務地 | 原則変わらない | 同上 |
| 正社員としての地位 | 付与されない | 企業独自の登用制度がある場合を除く |
有期契約の候補者を支援するうえで、もう一つ重要なのが雇止め(契約期間満了による更新拒否)です。
有期契約は期間満了で終了するのが原則ですが、一定の場合には雇止めが制限されます。労働契約法では、①有期契約が反復更新され実質的に無期契約と変わらない状態にある場合、②契約が更新されるものと期待することに合理的な理由がある場合には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く雇止めは認められないとされています。
実務上、候補者から「更新されないと言われた」という相談を受けることがあります。このとき重要なのは、エージェントが法的判断をしないことです。雇止めの有効性は個別事情によって判断されるため、疑問がある場合は労働局の総合労働相談コーナーや専門家への相談を案内するのが適切です。
エージェントの役割は次の選択肢を用意することにあります。争うかどうかは本人が決めることで、その間も転職活動を並行して進められるよう支援するのが実務です。
有期契約の候補者を支援する際、面談で確認すべき項目を挙げます。
①通算の契約期間。現在の会社で何年働いているか。5年に近づいている場合、無期転換申込権の発生時期がキャリア判断に影響します。②次の契約更新時期。転職活動のスケジュールを組むうえで必須の情報です。更新直前の退職は、企業側との関係に配慮が必要な場面もあります。
③無期転換後の処遇の見込み。その会社で無期転換した場合、待遇はどうなるのか。正社員登用制度があるのか。ここを確認せずに「待つ」判断をするのは危険です。
そのうえで候補者に伝えるべきは、「無期転換を待つ」と「いま転職する」の比較です。無期転換しても契約社員のままなら、転職して正社員になる方が早いこともあります。逆に、その会社に正社員登用の実績が豊富なら、待つ判断も合理的です。比較の材料を揃えるのが支援であり、どちらを選ぶかは本人が決めます(意思決定支援の記事)。
契約社員・派遣の経験を、職務経歴書でどう扱うかも支援の一部です。
雇用形態は正直に書く。隠すことはできませんし、隠す必要もありません。重要なのは雇用形態ではなく、担った職務の中身です。「契約社員として3年」ではなく、「◯◯業務を担当し、◯◯を改善」という記述に重心を置きます。
派遣の場合。就業先企業名を書けるかは派遣元との取り決めによります。書けない場合は「大手製造業(従業員◯名規模)」といった業種と規模での記述にします。
複数社の経験。有期契約が続くと社数が増え、「転職回数が多い」と見られる懸念があります。これは契約満了による終了であることを明記すれば解消できます。自己都合の転職と、契約期間満了はまったく意味が違うためです。
また、リクルートの契約社員(旧CV職)のように、有期契約でありながら市場で高く評価される経歴も存在します(リクルートの契約社員の記事)。雇用形態だけで市場価値を判断しないことが、支援の前提になります。
有期契約が同一使用者との間で通算5年を超えると無期転換の申込権が発生するが、無期転換で変わるのは契約期間だけで待遇や職務は原則そのままである。支援では通算期間・次の更新時期・無期転換後の処遇の3点を確認し、待つか動くかの比較材料を揃える。経歴では雇用形態より担った職務の中身に重心を置き、契約満了による終了は明記する。
記事の内容を前提にして、あなたの状況に合わせた答えをAIに出させます。質問を入れて「ChatGPTで相談」または「Claudeで相談」を押すと、記事の要点と質問がセットになった状態で開きます。