フューチャー(旧フューチャーシステムコンサルティング)は、ITの会社でありながら「コンサルティング」を社名に入れた草分けです。1989年、35歳の金丸恭文氏が創業しました。
「作るべきものを決める」側に立ちながら、作るところも手放さない。この二つを同じ会社で抱えたことが、37年たった今の利益構造にもそのまま表れています。本記事では創業の判断から持株会社化、連続買収までを順に追い、最後に候補者への語り方をまとめます。
金丸恭文氏は神戸大学工学部の計測工学科を卒業したあと、会計システムのTKCと、ロジック・システムズ・インターナショナルでシステムの実務を積みました。コンサル会社や大手メーカーではなく、システムを実際に作る側からキャリアを始めた人です。
当時の日本のシステム開発は、コンピュータメーカーの系列と、その下請けが中心でした。業務の要件を考える人と、それを実装する人は別の会社にいて、仕様書を介してやり取りをします。
この分業では、実装する側は「言われたものを作る」ことが仕事になります。しかし経営の課題を解くためのシステムなら、何を作るかこそが本題です。作る現場にいた人が、その上流に関われない構造に疑問を持った。これが創業の出発点になりました。
1989年11月28日、金丸氏は鹿児島市でフューチャーシステムコンサルティングを設立しました。翌1990年には東京都中央区へ本社を移し、その後も港区、品川区と移転を重ねていきます。
創業時に決めたのは、業務改革とシステムの実装を同じチームが担うという形です。要件を考える人と作る人を分けず、一つのチームで最後まで持つ。今でこそ珍しくない考え方ですが、系列の分業が当たり前だった当時は、それ自体が差別化になりました。
社名に「システム」と「コンサルティング」を並べたのも、この立場を示すためです。システム会社として発注を待つのではなく、経営の相談相手として最初から入る。同社は自らを「日本初のITコンサルティングファーム」と位置づけています。
主な出来事を、創業から現在まで並べます。店頭登録から東証一部までが3年、持株会社化から連続買収までが一続きになっている点がポイントです。
日本の大手IT企業の多くは、メーカー系(NEC、富士通、日立など)や通信系、ユーザー系(銀行や商社の情報システム子会社)のグループに属しています。親会社の案件や製品が、安定した仕事の土台になります。
フューチャーはそのどれにも属さない独立系です。特定メーカーの製品を売る制約がないため、顧客に合わせて技術を選べます。その代わり、親会社から回ってくる仕事はありません。提案の中身だけで案件を取るしかなかったのです。
この制約が、会社の性格を決めました。受け身では仕事が来ないので、顧客の経営課題に踏み込んだ提案をする。提案した以上は、自分たちで作って結果を出す。独立系であることが、上流と実装を一体で持つ形を強いたとも言えます。
| 区分 | 主な例 | 仕事の来方 | エンジニアの立ち位置 |
|---|---|---|---|
| メーカー系 | NEC・富士通・日立の系列 | 親会社の製品・案件が土台 | 自社製品を前提に設計・構築 |
| ユーザー系 | 銀行・商社などの情報システム子会社 | 親会社のシステムが中心 | 親会社の業務に深く入る |
| 独立系 | フューチャー、シンプレクスなど | 提案で一から獲得する | 技術選定から実装まで自分たちで決める |
1999年6月、同社は日本証券業協会に株式を店頭登録しました。創業からおよそ10年です。そこから3年後の2002年6月には、東京証券取引所の市場第一部に上場しています。
2000年代は、組織のかたちを整える時期でした。2004年にイギリスに駐在事務所を置き、2006年には大阪にオフィスを設けます。2007年にはウッドランドを吸収合併して、社名をフューチャーアーキテクトに変えました。
「アーキテクト」は建築家、つまり設計する人です。システムの「コンサルティング」から、企業の仕組み全体を設計する立場へ。社名の変更には、自分たちの役割をより上流に置き直す意図が読み取れます。
2011年には、中堅・中小企業向けのERP(基幹業務パッケージ)事業を切り出してFutureOneに移しました。大企業向けの個別開発と、中堅企業向けのパッケージでは、売り方も体制も違います。事業を性格ごとに分けて持つ考え方は、この頃から見えていました。
2016年4月、同社は大きな組み替えを行います。創業以来の本業であるITコンサルティング事業を、新しく作った子会社フューチャーアーキテクトへ移し、本体は事業を持たない持株会社になりました。社名もフューチャー株式会社に変えています。
持株会社の下には、ITコンサルのフューチャーアーキテクト、ERPのFutureOne、メディアの東京カレンダー、プログラミング教育のコードキャンプといった会社が、機能や業種ごとに並ぶ形になりました。
この順番が、後の連続買収の速さにつながります。本体が一つの事業会社のままだと、買収のたびに組織や制度の統合が必要になります。持株会社にしておけば、買った会社をそのままグループの一員として置けるからです。
持株会社化の翌年から、同社は買収を重ねていきます。2017年には横河電機からワイ・ディ・シー(製造業向けのシステム)を、2018年にはディアイティ(情報セキュリティ)を取得しました。その後もデザインの会社などを加えています。
到達点となったのが、2024年3月のリヴァンプの子会社化です。リヴァンプは企業の経営改革やマーケティングを支援する会社で、取得原価は約255億円。それまでの買収の合計を大きく上回る規模でした。
並べてみると、方向ははっきりしています。ITコンサルを中心に置いたまま、製造業の現場、セキュリティ、デザイン、経営そのものへと、顧客の課題に沿って守備範囲を広げてきました。「システムを作る会社」から「経営を支える会社の集まり」への移行です。
2025年12月期の連結売上高は約760億円、営業利益は約161億円で、営業利益率は21%台です。連結の従業員数は3,624名になりました。
出所:フューチャー 有価証券報告書(2025年12月期)をもとにした集計。数値は各時点で公表されたもの。
ただし中身を見ると、売上の約9割はITコンサルティング&サービス事業で、利益もほぼこの事業から出ています。買収で広げた領域は、まだ利益の柱にはなっていません。
もう一つ特徴的なのが、原価の低さです。同社の売上原価率は5割強で、同じくシステムを手がける大手SIerの多くより大幅に低い水準にあります。上流の設計から運用までを自社グループで抱え、外注に出す割合を抑えてきたことが、コンサルに近い利益率をシステム開発の事業で成り立たせています。
技術者を社内に抱えることは、固定費を増やすことでもあります。それでも外に出さないのは、創業時の「同じチームが最後まで持つ」という考え方が、そのまま利益の源泉になっているからです。
日本発の独立系コンサル・IT企業として、候補者からよく比べられる会社を並べます。同じ「独立系」でも、何を武器にしているかは大きく違います。
| フューチャー | シンプレクス | ベイカレント | |
|---|---|---|---|
| 創業 | 1989年 | 1997年 | 1998年 |
| 出発点 | システム実装の現場 | 外資系証券の金融IT | 小さなIT会社からの転換 |
| 強みの軸 | 業務改革と実装を一体で持つ | 金融のフロント業務×IT | ワンプール制による大量採用と総合コンサル |
| 実装の扱い | 自社グループで運用まで持つ | 上流から開発・運用まで一気通貫 | 戦略・業務改革が中心 |
| 向く候補者像 | 技術を手放さずに上流へ行きたい人 | 金融とITの両方を武器にしたい人 | テーマを限らず幅広く経験したい人 |
フューチャーの特徴は、「決める」と「作る」の両方を手放していない点です。ベイカレントのように戦略・業務改革に寄せるのでも、シンプレクスのように金融に絞るのでもなく、業界を問わず、設計から実装までを抱えています。
詳しくはベイカレントの創業ストーリー、シンプレクスの創業ストーリーもあわせて読むと、違いが整理しやすくなります。
フューチャーを候補者に紹介するとき、「ITコンサルの老舗」と言うだけでは伝わりません。創業の経緯を使うと、なぜこの会社なのかを候補者自身の言葉にしてもらいやすくなります。
「フューチャーは、仕様を受け取って作る側にいた創業者が、何を作るかを決める側に回るために作った会社です。今のあなたの経験は、そのまま入口になります。問われるのは、上流で何を決めたいかです。」
SIerで開発やPMを経験した候補者にとって、同社は技術を捨てずに上流へ行ける数少ない選択肢です。「コンサルに行きたい」という動機を、「決める側に回りたい」「作ったものの結果まで責任を持ちたい」という具体的な言葉に落としてもらうと、志望動機の質が上がります。
戦略系や総合系と迷っている候補者には、「作るところまで自分でやるか」を問いかけると判断がつきやすくなります。資料を作って終わる仕事より、システムが動くところまで見届けたい人には合います。逆に、業界やテーマを横断して幅広く経験したい人には、別の選択肢が向くこともあります。
創業の経緯と結びつけて準備しておきたいのは、次の三つです。
あわせて、持株会社と事業会社の違いにも触れておくと親切です。採用の窓口や配属先がフューチャーアーキテクトなどの事業会社になることが多いため、どの会社で何をするのかを候補者と確認しておくと、入社後のずれを防げます。
フューチャーは1989年、システムを作る現場にいた金丸恭文氏が「作るべきものを決める側」に回るために創業した独立系のITコンサルティング会社である。系列の後ろ盾がないことが、業務改革と実装を一体で持つ形を定着させ、それが今も高い利益率の源泉になっている。2016年の持株会社化と連続買収で守備範囲を広げたが、利益の中心は創業事業のままである。