マンパワーは、「人材派遣」という仕組みそのものを作った会社の一つとされます。日本でも、派遣が法律で認められるずっと前から事業を始めていました。
今では当たり前になった「必要なときに、必要な人を」という働き方は、どこから来たのか。2人の弁護士の小さな困りごとから、世界規模の人材サービスになるまでを追います。
1948年、ミルウォーキーで法律事務所を営んでいた弁護士のエルマー・ウィンターとアーロン・シャインフェルドは、締め切りの迫った仕事を抱えていました。ところが秘書が休暇を取ってしまい、急いでタイピストが必要になります。
2人はいくつもの会社に「タイピストを貸してもらえないか」と頼みましたが、どこも対応できませんでした。この経験から、2人は「一時的な業務の支援を必要とする市場がある」と確信し、事業を始めます。これがマンパワーの出発点です。
当時、働くとは一つの会社に所属することでした。期間や業務を区切って、別の会社の仕事を手伝うという考え方は一般的ではありません。
マンパワーが広げたのは、企業にとっては「必要なときだけ人を確保できる」、働き手にとっては「自分の都合に合わせて働ける」という仕組みです。第二次世界大戦後の経済成長のなかで、この形は米国全土に急速に広がっていきました。
この仕組みは、企業と働き手の間に派遣会社という第三者が入ることで成り立ちます。派遣会社が働き手を雇い、企業に送り、仕事の質と人のつなぎ役を担う。今の人材派遣の原型です。
米国で急成長したマンパワーは、1956年に初めて海外にオフィスを構えます。その後、北米、欧州、南米へと拠点を広げ、1964年にはアジア最初の拠点として香港に進出しました。
国ごとに法律も労働慣行も違うため、同じサービスをそのまま移すことはできません。各国の制度に合わせて事業の形を変えながら広がっていったことが、世界規模の人材サービスになる土台になりました。
1966年11月、米国マンパワーにとって7番目の進出国として、マンパワー・ジャパンが設立されました。日本で初めての人材派遣会社です。
注目したいのは時期です。日本で労働者派遣法が施行されたのは1986年。マンパワーは、派遣が制度として認められる20年前から、日本で事業を始めていたことになります。事業が先にあり、制度が後から追いついた例です。
1970年代には東京・横浜・大阪・名古屋・福岡・札幌・神戸と全国の主要都市に拠点を広げ、顧客やスタッフへの調査も早くから始めています。のちに登場するテンポラリーセンター(現パソナ)やテンプスタッフ、スタッフサービスといった日本の派遣会社にとって、先行者の立場でした。
米国の親会社マンパワーグループは、アデコ、ランスタッドと並ぶ人材サービスの世界大手の一角で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。世界70の国・地域にネットワークを持ちます。
日本法人は2011年、キャリア支援・再就職支援を手がけるライトマネジメントジャパンと合併し、社名をマンパワーグループ株式会社に改めました。現在は複数のブランドで事業を展開しています。
| ブランド | 主な領域 |
|---|---|
| Manpower | 人材派遣・紹介予定派遣・人材紹介 |
| Experis(エクスペリス) | IT分野に特化した人材サービス |
| Right Management | キャリア支援・再就職支援・組織開発 |
| ManpowerGroup Solutions | アウトソーシング |
「必要なときに人を送る」から始まった会社が、IT人材、キャリア支援、アウトソーシングへと広がってきました。派遣という一つの仕組みから、働く人に関わるサービス全体へという流れは、世界の人材大手に共通しています。
日本で事業を展開する外資系の人材大手は、成り立ちがそれぞれ違います。
| マンパワー | アデコ | ランスタッド | |
|---|---|---|---|
| 創業 | 1948年(米国) | 1996年(スイス・フランスの2社が合併) | 1960年(オランダ) |
| 起点 | 弁護士2人の困りごと | 欧州の人材会社同士の合併 | 学生2人の事業 |
| 日本での特徴 | 日本初の人材派遣会社(1966年) | 日本でも外資系大手として展開 | 日本でも外資系大手として展開 |
候補者が「外資系の派遣・紹介会社」を比べるときは、日本での歴史の長さと、得意な職種・業界を確認すると違いが見えてきます。
「マンパワーは、弁護士2人が『急ぎの仕事に人がいない』と困った経験から、人材派遣という仕組みそのものを作った会社です。日本でも派遣法より20年早く事業を始めています。業界の原点を知ったうえで働けるのは強みになります。」
人材業界の仕事を「マッチング」とだけ捉えている候補者には、企業の困りごとを起点に仕組みを作る仕事として説明すると、志望動機が深まります。
「なぜ人材業界なのか」を聞かれたとき、多くの候補者は自分の転職体験を語ります。それ自体は悪くありませんが、創業者たちのように、誰の、どんな困りごとを解きたいのかまで言葉にできると、説得力が増します。マンパワーの創業のきっかけは、その問いを立てるための良い例になります。
マンパワーは1948年、臨時のタイピストが見つからなかった弁護士2人の困りごとから始まった、世界最初期の人材派遣会社である。1966年に日本初の人材派遣会社として上陸し、派遣法より20年早く事業を始めた。現在は世界大手の一角として、派遣からIT人材、キャリア支援、アウトソーシングへと領域を広げている。