リンクアンドモチベーションは、「モチベーション」を切り口に、企業の採用、育成、風土改革、制度設計を支援する会社です。組織の状態を診断するクラウドサービスでも知られ、就職先としても学生の人気を集めてきました。
「やる気」や「士気」と呼ばれ、精神論で語られがちだったものを、どうやって事業にしたのか。リクルートの人事から生まれた来歴を追います。
小笹芳央氏は1961年、大阪府に生まれました。1986年に早稲田大学政治経済学部を卒業し、リクルートに入社します。当初は商社への入社を決めていましたが、リクルートの社員に学生時代の活動を根掘り葉掘り聞かれ、熱心に口説かれて入社を決めたと語っています。
リクルートでは、人事部の人材開発課長、組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所の主幹研究員などを務め、一貫して組織と人事の領域を歩みました。社内の人と組織を扱う経験と、顧客企業の組織を支援する経験の両方を積んだことになります。
2000年、小笹氏はリクルートを離れ、リンクアンドモチベーションを設立します。社名に「モチベーション」という言葉を入れたこと自体が、この会社の立場を示しています。
それまで、社員のやる気や組織の士気は、経営者の人柄や精神論として語られることが多い領域でした。同社は、日本で初めて「モチベーション」に着目した組織変革のコンサルティングを掲げたとされています。
同社はこの考え方を「モチベーションエンジニアリング」という基幹技術として体系化しました。経済学、心理学、社会システム論などの知見をもとに、組織の状態を診断し、採用・育成・制度・風土の施策に落とし込む、というものです。
小笹氏によると、創業からの最初の数年はコンサルティングの基盤を作る時期、2006年から2010年はモチベーションというテーマで事業領域を広げる時期でした。
この間、同社は企業向けサービスを手がける会社のM&Aを活発に行います。採用のアウトソーシング、採用広報やPR、研修・会議の運営支援など、組織と人に関わる周辺の事業を取り込み、規模を広げました。2007年の東証二部、2008年の東証一部への上場は、M&Aをしやすくする意味もあったと小笹氏は語っています。
2011年以降は、企業向けだけでなく、個人に直接届ける方向にも踏み出します。学習塾、パソコン教室、資格取得支援を行う会社を取り込み、進学・転職・キャリアアップを支援する個人向けの事業を強化しました。
| 時期 | 主なテーマ |
|---|---|
| 2000〜2005 | モチベーションエンジニアリングによる組織コンサルの基盤づくり |
| 2006〜2010 | M&Aで企業向けの周辺事業(採用・PR・研修運営など)へ |
| 2011〜 | 学習塾・資格スクールなど個人向けのキャリア支援へ |
| 2016〜 | 組織診断のクラウド化とエンゲージメントの普及 |
コンサルティングは、人が時間をかけて行う仕事です。顧客を増やすには、コンサルタントを増やすしかありません。同社は、組織の状態を診断する仕組みをクラウドサービスとして提供することで、この制約を越えようとしました。
社員へのサーベイで組織の状態を数値にし、定期的に測って改善を回す。「エンゲージメント」という言葉が日本の人事の世界で広く使われるようになった背景には、こうしたサービスの普及もあります。
一方で、数値はあくまで入口です。診断の結果を受けて何を変えるかは、各社の経営と現場に委ねられます。同社がコンサルティングとクラウドの両方を持つのは、そのためです。
| リンクアンドモチベーション | コーン・フェリー | リクルート | |
|---|---|---|---|
| 起点 | モチベーションを軸にした組織変革 | 経営幹部の探索 | 求人情報の提供 |
| 強み | 組織診断と風土改革 | 幹部採用と報酬・評価の設計 | 採用市場の集客力 |
| 関わり方 | 組織の「中」を変える | 誰を採り、どう報いるか | 人と企業の出会いを作る |
同じ「人と組織」を扱う会社でも、どこから入るかが違います。コーン・フェリーやリクルートの創業ストーリーとあわせて読むと、人材業界の中での位置づけが見えてきます。
「リンクアンドモチベーションは、リクルートで組織人事を担ってきた創業者が、『モチベーション』を測り、設計できるものにしようとして作った会社です。人の気持ちを、仕組みで扱う仕事に関心がありますか。」
人事や組織コンサルを志望する候補者には、感覚で語られがちなものを、仕組みと数値で扱う仕事であることを伝えると、向き不向きを判断しやすくなります。
エンゲージメントの考え方は、候補者の転職理由を聞くときにも役立ちます。「給与が低い」「人間関係が悪い」という表面の理由の奥に、組織への共感や、仕事への手応えの不足がないか。そこまで聞けると、次の職場で同じ不満を繰り返さない提案ができます。
リンクアンドモチベーションは2000年、リクルートで組織人事を担ってきた小笹芳央氏が、精神論で語られがちだったモチベーションを測り設計できる技術として体系化するために設立した会社である。創業8年で東証一部に上場し、M&Aで周辺事業や個人向けの学びへと広がった。組織診断のクラウド化により、エンゲージメントを数値で扱う考え方を広めた。