入社後フォローが形骸化する理由は明確です。「その後いかがですか」と聞くから。この質問には「順調です」としか答えられません。拾うべきサインを決め、それを引き出す質問を用意して初めて、フォローは機能します。
※本記事は編集部が実務の設計をもとに構成したものです。数値は一般的な目安であり、企業・領域により異なります。
入社後フォローの電話やメールで、最も多い質問が「その後いかがですか」です。返ってくる答えは、ほぼ「おかげさまで順調です」。
この質問が機能しない理由は3つ。①抽象的すぎて何を答えればよいか分からない ②紹介してくれた相手に不満を言いにくい。入社を支援してもらった手前、問題があっても言い出しにくい。③本人が問題を言語化できていない。違和感はあるが、何が原因か整理できていない段階です。
したがって、具体的に、答えやすい形で聞く必要があります。「聞いていた業務内容と、実際の担当は合っていますか」「分からないことがあったとき、聞ける方はいらっしゃいますか」。
この違いは決定的です。前者は社交辞令の交換で終わり、後者は事実の確認になります。
早期離職につながる要因を、3つに絞って追跡します。
①期待値のずれ。最も多い原因です。「聞いていた業務と違う」「裁量があると思っていたが実際は違う」。入社1か月で顕在化することが多く、この段階なら企業側との調整で解決できる場合があります。
②孤立。中途入社者は「できる前提」で扱われ、質問しにくい立場に置かれます。相談相手がいない状態が続くと、成果も出ず、居場所も感じられなくなります(オンボーディング設計)。
③成果が出ない焦り。入社3か月前後で顕在化します。「まだ何も貢献できていない」という焦りが、自分は場違いだったのではという自己否定に変わる時期です。
この3つは時期がずれて現れます。だからフォローも、時期を分けて設計する必要があります。
| 時期 | 拾うべきサイン | 聞くべき質問 |
|---|---|---|
| 入社1か月 | 期待値のずれ | 業務内容は聞いていた通りか、質問できる相手はいるか |
| 入社3か月 | 孤立、成果の焦り | チームに馴染めているか、いま難しいと感じることは何か |
| 入社6か月 | キャリアの見通し | 任される範囲は増えているか、次に目指す姿は見えているか |
| 入社1年 | 定着と次の展望 | この選択をどう評価しているか、周囲に勧められるか |
候補者から拾った情報を、企業にどう返すか。ここに技術が要ります。
やってはいけないこと。候補者の発言をそのまま伝える。「◯◯さんが、業務内容が違うとおっしゃっています」。これは候補者を告げ口した形になり、社内での立場を悪くします。信頼関係が崩れます。
正しい伝え方。①候補者に「企業に伝えてよいか」を確認する。これが大前提です。②伝える場合も、個人の不満ではなく、構造の提案として伝える。「中途入社の方が最初の1か月で業務範囲を掴みにくいというお話を、複数社で伺います。御社でも初期の業務説明を厚くされると、立ち上がりが速くなるかもしれません」。
③緊急度が高い場合は、候補者の同意を得たうえで直接伝える。ハラスメントや労働条件の相違など、放置できない事案は例外です。
この扱いを誤ると、候補者からも企業からも信頼を失います。逆に適切に扱えば、企業からは「入社後まで見てくれる」と評価され、候補者からは「味方でいてくれた」と記憶されます。
最後に、この活動の事業的な意味を整理します。
入社後フォローはコストに見えます。決定は完了しており、追加の売上は発生しない。だから後回しにされ、やがて形骸化します。
しかし実際には、最も効率の良い営業活動です。理由は3つ。
①次の求人が生まれる。入社した候補者が、その企業内で次の採用ニーズを教えてくれます。「うちの部署でもう1人採ることになりました」。求人開拓の最短ルートです(企業との定例設計)。
②紹介が生まれる。定着し、満足している候補者は、知人を紹介してくれます。これは広告費ゼロの集客です(リファラル設計)。
③再度の転職相談が来る。数年後、その人が再び動くとき、最初に相談する相手になります。人材紹介は生涯で複数回発生する取引です(LTVの記事)。
つまり入社後フォローは、次の案件を仕込む活動です。この認識があれば、フォローは義務ではなく投資として位置づけられます。
「その後いかがですか」では社交辞令しか返らず、拾うべきサインを決めて具体的に聞くことでフォローは機能する。期待値のずれ・孤立・成果の焦りは時期をずらして現れるため、1か月・3か月・6か月で聞く内容を変える。企業へのフィードバックは本人の同意を得て構造の提案として伝え、フォロー自体が次の求人と紹介を生む最も効率の良い営業活動になる。
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