顧客のために動いた結果、顧客のほうから独立を勧められた。ノースサンドは、営業ではなく信頼から生まれた会社である。
編集部の視点OCTYPE html>前田知紘(まえだ・ともひろ)は、コンサルティング会社ノースサンドの創業者・代表取締役社長CEO。
前田知紘氏は、総合コンサルティング会社ノースサンドの創業者で、代表取締役社長CEOです。エンジニアとして10年働き、33歳でベイカレントに転じてコンサルタントに。顧客から「独立するなら仕事を出す」と言われて、仲間と会社を立ち上げました。
スキルではなく、人間力でコンサルティングを変えようとする創業者。
前田知紘氏(まえだ・ともひろ)は1978年5月31日生まれ、広島県出身。株式会社ノースサンドの創業者で、代表取締役社長CEOです。経歴は次のとおりです(上場時の公式資料、インタビュー、報道にもとづく)。
前田氏は、自分には昔からコンプレックスがあったと語っています。中学受験に失敗し、打ち込んだ部活動でも結果が出ず、大学も高学歴とは言えない。学生時代に記念のつもりで戦略コンサルの選考を受けたものの、よくわからず試験の途中で寝てしまったといいます。
2002年に國學院大學経済学部を卒業し、ベルシステム24でコールセンター向けアプリの開発に携わりました。2006年にはデータベースの会社サイベース(現SAPジャパン)に移り、6年間エンジニアとして働きます。
そこでの評価は高くありませんでした。製品や技術の細かい知識は苦手で、会社からは技術力がないと見られていた。一方で、常駐先の顧客とは良い関係を築き、顧客からはプロジェクトに指名されていた。この食い違いが、のちの経営の考え方につながっていきます。
証券会社のIT部門に常駐していたとき、同じ世代のコンサルタントが顧客の部長や役員と対等に打ち合わせをする姿を見て、コンサルへの転職を決めます。2012年、33歳でベイカレント・コンサルティングに入社しました。
コンサルの経験はほとんどなかったにもかかわらず、入社から3か月で、同じ部門だけで50人、顧客全体で100人ほどのコンサルタントが関わる大きな現場のトップに立ちます。顧客は大手の外資系生命保険会社で、年間100億円規模の巨大なプロジェクトでした。
その現場には、名だたる外資系コンサルの高学歴な人材が大勢いました。ところが前田氏の目には、顧客に認められていないのに自社や自分の賢さを売り込む人が多く映ったといいます。スキルが高くても、相手の気持ちより自分の好む方向へ持っていこうとする。その人たちは、顧客がコスト削減に動いたとき、真っ先に契約を切られていきました。
顧客に寄り添い続けた前田氏のチームは、評価を得ていきます。そしてある日、顧客から「あなたが独立するなら、仕事をお願いしたい」と言われました。これが創業のきっかけです。
2015年7月、東京都江東区北砂で株式会社ノースサンドを設立しました。社名の「ノース(北)」と「サンド(砂)」は、この創業の地に由来します。メンバーは、当時のプロジェクトの部下を中心とする約10人。前田氏はその後、2016年7月に代表取締役社長に就いています。
上場時の公式資料は、創業の経緯を前職で顧客の本当のニーズを探る地道な働き方を評価された経験にもとづく、と説明しています。思いやりを持って顧客に寄り添えるコンサルタントが集まり、個人ではなくチームで新しい価値を届ける会社をつくる。それがノースサンドの出発点です。
いまの経営陣にも、ベイカレントでともに働いた人が多くいます。人事を率いる専務取締役CHROはソフトバンクからベイカレントを経て、営業を率いる専務取締役CSOはベイカレントに新卒で入社して、それぞれ創業期に参画しました。
前田氏の考え方を一言で表すのが「スキルよりセンス」です。仕事で成果を出すのは、資格や知識よりも、相手を動かす人間力の部分が大きい。人は感情で動くのだから、「この人にまた来てほしい」と思われる人間性がなければ続かない、という考えです。
そのため、ノースサンドは採用でも育成でも、スキルより人を見ます。上場時の公式資料では、人間力を「愛嬌・素直さ・しつこさ」の3つと定義し、研修で教えるのは難しく、人間力のある人が集まる環境に身を置くことで自然と身につくものだと説明しています。
前田氏は、大手が大人数を送り込む今のコンサルを「高級派遣業」と呼び、すでに差がつきにくくなっていると見ています。目指すのは、事業が形になるまで顧客と一緒に走る「コンサル3.0」です。
ノースサンドは、自社の強みを「ファンづくりサイクル」と呼んでいます。採用、組織運営、営業とコンサルのそれぞれの場面で、関わる人を会社のファンにしていく仕組みです。
組織の中では、前田氏が毎営業日の始業前に、全社員へ理念についてのメッセージを送っています。社内の仕事を公募して手を挙げた人が担う「クエスト制度」もあり、評価には会社への貢献も含まれます。
その結果、離職率は5期連続で10%未満(2025年1月期は6.6%)と、コンサル業界としては低い水準を保っています。前田氏は報道のインタビューで、成果が出ない人を放っておくのではなく、合う現場を探したり研修を重ねたりして「見捨てずに伴走する」と語っています。
エージェントにとって見逃せないのが、ノースサンドが人材エージェントを「ファン」にする対象として明確に位置づけていることです。
日ごろ候補者を紹介してくれるエージェントに感謝を伝えるため、「エージェント感謝祭」や「リクルーターアワーズ」を独自に開いています。取引するエージェントは2023年1月期の127社から、2025年1月期には312社に。エージェント経由の候補者は3,631人から16,110人へと、2年で4倍を超えました。
| 採用の数字(2025年1月期) | 内容 |
|---|---|
| 応募者数 | 17,857人(選考倍率33倍) |
| 入社者数 | 541人(新卒107人、中途434人) |
| 中途の出身 | 事業会社が89%、コンサル会社が11% |
| 中途応募のうちコンサル業界の外から | 92.4% |
中途の大半がコンサル業界の外から来ていることは、コンサル未経験の候補者を紹介しやすい会社であることを意味します。前田氏は、中途を月30人ほど、新卒を年100人前後のペースで採り続けると語っています。
売上は2021年1月期の14.8億円から、2026年1月期には261億円へ。5年で約18倍です。2026年1月期の営業利益は55億円と前年の2倍になり、2027年1月期は売上384億円を見込んでいます。
2025年11月21日、東証グロース市場に上場しました。前田氏は資産管理会社を含めて株式の過半を持つ創業者で、報道のインタビューでは売上600億円という目標も語っています。コンサルタントの稼働率は、創業以来90%以上を保っているといいます。
ノースサンドは、ベイカレント出身者がつくり、似た事業の形を持つことから、業界で「ベイカレクローン」の一社と呼ばれることがあります。前田氏はこれについて、報道のインタビューで何も感じないと答えています。
分業の仕組みはベイカレントのBP(営業職)、部門を分けない配置はワンプール制の記事で詳しく解説しています。
| 前田氏の経歴・考え方 | 候補者への伝え方 |
|---|---|
| エンジニアから33歳でコンサルへ | SEや事業会社からの転職でも活躍の道があること |
| スキルよりセンス | 面接で見られるのは、愛嬌・素直さ・やり切る力であること |
| 顧客の一員として働く | 「コンサルらしい」華やかさより、地道な気配りを大切にする社風であること |
| 見捨てずに伴走する | 離職率が低く、育ててもらえる環境であること |
一方で、行動指針には「スピードで圧倒しよう」のような熱量の高い言葉も並びます。人に寄り添う優しさと、やり切る厳しさの両方がある会社だと伝えると、入社後のギャップを防げます。
出身企業のベイカレントについては創業ストーリー・歴史、社長の阿部義之氏の記事もあわせてご覧ください。
前田知紘氏は、技術力がないと言われたエンジニアから33歳でベイカレントに転じ、顧客に寄り添う働き方で評価されて2015年にノースサンドを創業した。「スキルよりセンス」を掲げ、人間力を「愛嬌・素直さ・しつこさ」と定義し、人材エージェントまでファンにする仕組みで大量採用と低い離職率を両立させた。売上は5年で約18倍の261億円に達し、2025年に上場している。
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