ツナググループは、コンビニや飲食店、小売店などのアルバイト・パートの採用を、企業に代わって担う会社です。応募の受付から面接の設定、求人媒体の選び方、定着の支援までを手がけます。
求人広告の最大手で働いていた人が、なぜ独立して「採用の代行」を始めたのか。媒体を売る側と、企業の側に立つ側の違いから追います。
米田光宏氏は1969年、大阪府に生まれました。関西学院大学を卒業し、1993年にリクルートフロムエーに入社します。人材の市場で働きたいと考えての選択でした。
その後の14年間、米田氏は営業、商品企画、営業企画、マーケティングと立場を変えながら、一貫してアルバイト・パートの採用領域に関わりました。最後はアルバイト・パート領域の事業企画の責任者を務めています。
リクルートは、求人広告というメディアを作って売る会社です。しかし、自社のメディアだけでは、アルバイト・パートの採用に必要な質と量を十分に確保できないことがあります。採用を成功させるには、面接の準備や、店ごとの働き方の伝え方、そして何より定着にまで踏み込む必要があります。
米田氏は、メディアを売る立場ではなく、顧客のそばでコンサルティングや業務の代行を行う立場を選びます。2007年2月、アルバイト・パート専門のコンサルティング会社として、ツナグ・ソリューションズ(現ツナググループ・ホールディングス)を設立しました。
この事業は、さまざまな採用媒体を持つリクルートの中では実現できない、と米田氏は語っています。特定のメディアを売る会社が、他社のメディアも含めて中立に選ぶことは難しいからです。
設立の翌月、同社は採用代行サービスを始めます。RPO(採用業務の代行)は正社員の採用ではすでに事業化されていましたが、アルバイト・パートの領域で始めたのは日本初だったとしています。
RPOの特徴は、特定の求人媒体に縛られないことです。企業の求人に合わせて、あらゆる媒体から最適なものを選べる。米田氏は、RPOなら他の競合を協業相手に変えることができ、シェア100%を実現することもできると語っています。
| 求人メディア | ツナグのRPO | |
|---|---|---|
| 立ち位置 | メディアを売る側 | 企業の側に立つ |
| 使う媒体 | 自社のメディア | あらゆる媒体から最適なものを選ぶ |
| 関わる範囲 | 求人の掲載 | 応募受付・面接設定・定着支援まで |
| 他社との関係 | 競合 | 協業相手 |
創業直後に大手新聞で取り上げられると、大手企業からの問い合わせが急増しました。社員11名での出発でしたが、郊外の幹線道路沿いに並ぶお店の多くが同社の顧客になっていったといいます。
同社が創業した翌年の2008年、日本の人口は約1億2,808万人でピークを迎えました。そこから人口減少の時代に入り、アルバイト・パートを中心とした現場の人手不足は、企業の経営課題そのものになっていきます。
同社は「採用市場のインフラになる」を経営理念に掲げ、アルバイト・パートやエッセンシャルワーカーの採用に特化してきました。2025年9月期の売上高は約183億円です。人材業界の多くがホワイトカラーやIT人材に集中するなか、現場で働く人の採用という領域で存在感を持っています。
近年は、数時間単位で働くスポットワークの広がりにも関わり、業界団体の設立を主導しました。働き方が細かく分かれていくなかで、採用の仕組みも変わり続けています。
「ツナグは、求人メディアを売る側から、企業の側に立って採用全体を支える側に移るために作られた会社です。特定の商品を売るのではなく、顧客にとって最適な手段を選ぶ仕事がしたい人に向いています。」
人材業界の営業は、自社の商品を売る仕事になりがちです。中立の立場で最適な手段を選ぶという働き方に関心がある候補者には、ツナグの来歴が良い説明材料になります。
アルバイト・パートの採用で重要なのは、応募を集めることより定着させることだと米田氏は語っています。人材紹介でも、入社後に活躍し続けられるかまで見ることが、次の依頼につながります。
ツナググループは2007年、リクルートでアルバイト・パートの求人メディアに14年関わった米田光宏氏が、媒体を売る側から企業の側に立つ側へ移るために設立した会社である。アルバイト・パート領域で日本初の採用代行を始め、あらゆる媒体を中立に使うことで競合を協業相手に変えた。人口減少による現場の人手不足を背景に、採用市場のインフラをめざしている。