求人を多く持っている会社ほど決定数が多い。これは正しくありません。実態は逆で、求人が多いほど一件あたりに割ける時間が減り、どれも中途半端になる。決定数を増やすために必要なのは、求人を増やすことではなく捨てることです。
※本記事は編集部が実務の設計をもとに構成したものです。数値は一般的な目安であり、企業・領域により異なります。
「求人は多いに越したことはない」という前提を、まず疑います。
求人を1件持つと、その求人には見えないコストがかかります。求人票の理解と更新、候補者への説明準備、推薦後のフォロー、企業への定期連絡。1件あたり月に数十分から数時間。これが50件あれば、それだけで週の相当な時間が消えます。
問題は、そのコストが決まらない求人にも等しくかかることです。動いていない求人、要件が厳しすぎて誰も通らない求人、企業側の熱量が落ちた求人。これらを抱え続けることで、決まる求人に割ける時間が削られています。
決定数を増やしたいなら、まずいま持っている求人のうち、どれが本当に決まるのかを仕分けることです。これは求人開拓より優先度の高い作業です。
求人を決まりやすさ(候補者を出せば通る確度)と単価(決定時の粗利)の2軸で分類します。
A:主力(決まりやすい×単価高)。最優先。ここに時間の50%以上を投じます。候補者データベースの掘り起こし、専用のスカウト文面、企業との週次連携まで行う価値があります。
B:量産(決まりやすい×単価中低)。効率で回す領域。テンプレート化し、時間をかけずに件数を積みます。新人の育成にも使えます。
C:挑戦(決まりにくい×単価高)。選別が必要です。1〜2件に絞り、関係構築の投資と割り切って取り組みます。全部やろうとすると時間を溶かします。
D:整理対象(決まりにくい×単価低)。切る候補です。ここに時間を使っている限り、決定数は増えません。
| 象限 | 性質 | 時間配分の目安 | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| A:主力 | 決まる×単価高 | 50%以上 | データベース掘り起こし、専用スカウト、週次連携 |
| B:量産 | 決まる×単価中低 | 25% | テンプレート化、効率運用、新人育成に活用 |
| C:挑戦 | 決まりにくい×単価高 | 15%(1〜2件に絞る) | 関係構築の投資と割り切る |
| D:整理対象 | 決まりにくい×単価低 | 10%以下 | 切る、または一時停止の合意を取る |
「決まりにくい」の中には、難易度が高い求人と実質的に死んでいる求人が混在しています。後者を見分ける指標を挙げます。
①推薦への返答が遅い・返ってこない。1週間以上の放置が常態化している求人は、社内の優先度が落ちています。②面接設定まで進まない。書類は通るのに面接が組まれない場合、採用の緊急度が下がった可能性があります。
③要件が変わり続ける。推薦のたびに求める人物像がずれる求人は、社内で要件が固まっていません。ここに候補者を出し続けると、候補者の時間も信頼も失います。④半年以上、誰も通っていない。他社エージェントも含めて動いていない求人は、要件と市場の乖離を疑うべきです。
⑤担当者が変わって引き継がれていない。採用の経緯を知る人がいなくなった求人は、判断基準そのものが失われています。
求人を整理するとき、関係まで切る必要はありません。むしろ丁寧に伝えることで、信頼が上がる場面です。
有効なのは「一時停止の提案」という形です。「現在の要件では、市場でお応えできる方が限られています。要件を見直していただくか、いったん募集を止めて別ポジションに注力する方が、御社にとって効率的だと考えます」。切るのではなく、提案として整理する。
この伝え方には副次的な効果があります。要件の見直しが始まることがあるのです。「どこを緩められますか」という議論に入れれば、死んでいた求人が生き返る可能性もあります。
逆にやってはいけないのが放置です。推薦せず、連絡もせず、求人だけ抱え続ける。企業側から見れば「あのエージェントは何もしてくれない」という評価になり、次のポジションで声がかからなくなります。切るなら、切ると伝えるのが誠実です(求人ヒアリングの記事)。
ポートフォリオは一度作って終わりではありません。四半期ごとに見直す運用にします。
見直しの手順は4つ。①実績の集計。求人別に、推薦数・面接数・決定数・粗利を出します。感覚ではなく数字で見ます。②象限の再配置。実績をもとに、AだったものがCに落ちていないか、DだったものがBに上がっていないかを判定します。
③整理と補充。Dを整理し、空いた時間で新規開拓を行います。ここで初めて求人開拓が意味を持ちます。時間を空けずに開拓しても、抱えるだけで終わります(求人開拓の記事)。
④企業への共有。A象限の企業には、四半期の振り返りを共有します。推薦数、通過率、市場の反応。これができるエージェントは、単なる供給者からパートナーへ位置づけが変わります。
この運用を回すと、求人数は減るのに決定数は増えるという現象が起きます。時間という有限な資源を、決まるところに集中させているからです(KPI設計・時間術)。
求人は多いほど良いのではなく、抱えるほど一件あたりの時間が減って決定数が下がる。決まりやすさと単価の4象限で仕分け、死んでいる求人を見分けて整理し、空いた時間を主力に集中させることが決定数を増やす近道になる。整理は放置ではなく一時停止の提案として伝えることで、関係を壊さず要件見直しの議論にもつながる。
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