推薦文は候補者の宣伝文ではありません。採用側の意思決定コストを下げる情報提供です。この定義を間違えると、書けば書くほど読み飛ばされる推薦文になります。
採用担当の実態から始めます。ポジションによっては週に数百件の書類が届き、1件の一次審査は数十秒。この状況で推薦文に期待されるのは、書類だけでは分からない情報。なぜ転職するのか、数字の背景、懸念点の実際です(採用担当インタビューで語られた通りです)。
つまり書類の内容をなぞった推薦文は、採用側の時間を1秒も節約しません。「職務経歴書に書いてあることは書かない」。これが推薦文の第一原則です。
①結論:この候補者を一言でいうと何ができる人か(冒頭1行)。②数字の背景:書類の実績数字に文脈を足す(目標の難易度、市場環境、本人の工夫)。③転職理由の文脈:ネガティブに見える理由を、キャリアの文脈として翻訳する。④懸念への先回り:転職回数、ブランク、年齢:採用側が引っかかる点を隠さず、実際の背景と評価を添える。⑤選考状況と温度感:他社状況と志望度、意思決定のスピード感。
特に④が信頼の分水嶺です。懸念を隠す推薦文は面接で必ずバレ、次からエージェントごと疑われます。正直な推薦文は短期の通過率を下げても、長期の信頼と非公開求人へのアクセスを買います。
| 要素 | NG例 | OK例 |
|---|---|---|
| 結論 | 「非常に優秀な方です」 | 「新規開拓の進め方化が強みの営業です」 |
| 数字 | 「達成率120%の実績」(書類の写し) | 「縮小市場で前年比の目標。120%は部内1位」 |
| 懸念 | (触れない) | 「在籍2年ですが、事業撤退による転職で本人都合ではありません」 |
全候補者に「非常に優秀」「即戦力」と書くと、あなたの推薦文の通貨価値は下がり続け、やがて読み飛ばされます。採用側はエージェントごとの的中率を記憶しています。推薦の言葉は、使うほど安くなる通貨だと考えてください。
実務の目安は、最上級の言葉は月に数回まで。それ以外は事実と文脈で語る。「この人は本当に推せる」という推薦が月に1〜2回だけ来るエージェントは、その1〜2回で確実に会ってもらえるようになります。
良い推薦文の材料は面談で仕込まれます。数字の背景、転職理由の3階層、懸念の実際:ヒアリングの質問設計で掘った情報がそのまま5要素になります。面談メモに候補者本人の言葉を残しておくと、推薦文に生の言葉を引用でき、定型文臭が消えます。
営業職の候補者なら、The Process.で実績をプロセス分解してもらうと、②数字の背景がそのまま手に入ります。候補者の面接準備と推薦文の材料集めが一度に終わる、実務上おすすめの流れです。
推薦文は宣伝ではなく、採用側の意思決定コストを下げる情報提供。結論・数字の背景・転職理由の文脈・懸念への先回り・選考状況の5要素で構成し、書類の要約と言葉のインフレを避ける。正直な推薦文は長期の信頼と非公開求人へのアクセスを買う投資になる。
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