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Market Trend

企業が​「採る」​より​「辞めさせない」​に​投資し始めた離職防止の​強化が​転職市場に​与える影響

業界・制度 2026.09.14
この記事の要点

採用コストが高騰した結果、企業は「採る」より「辞めさせない」方が安いという計算に至りました。離職防止への投資が増えています。エージェントにとってこれは、カウンターオファー(現職からの引き留め)の増加として現れます。内定を出しても、現職が条件を上げて引き止める。退職交渉の支援が、これまで以上に重要になりました。

※出典:doda「転職市場予測2026下半期」、各社の公表資料と、それに基づく編集部の整理です(2026年9月時点)。

  • 1人採る費用 >> 1人引き留める費用。採用単価の高騰が、企業をリテンション投資へ向かわせた。
  • 現れ方はカウンターオファーの増加。内定後に現職が昇給・昇格を提示して引き止める。
  • エージェントの対応は退職交渉の事前設計。「引き止められる前提」で、候補者と準備しておく。
DEFINITION
リテンションとは
リテンションとは、企業が既存の従業員の離職を防ぎ、定着を促す取り組みである。採用コストの高騰を背景に、処遇改善・キャリア面談・配置転換・働き方の調整といった施策への投資が増えている。
カウンターオファーとは
カウンターオファーとは、退職を申し出た社員に対して現職の企業が昇給・昇格・異動などの条件を提示し、引き留めを図ることである。採用コストが引き留めコストを大きく上回るため、合理的な判断として増加している。

なぜ企業は​離職防止に​投資し始めたのか

単純な計算です。1人を採用するコストが、1人を引き留めるコストを大きく上回るようになりました。

年収600万円の人材を紹介で採用すると、手数料は180〜210万円。加えて、選考の工数、入社後の立ち上がり期間、その間の生産性の低下。実質的な採用コストは300万円を超えることも珍しくありません。

一方、引き留めるコストは年収を50万円上げることかもしれません。あるいは、希望する部署への異動、働き方の調整、キャリア面談の時間。採用より圧倒的に安い。

この計算が、企業の行動を変えました。「退職の申し出があってから慌てる」のではなく、その前に手を打つ。定期的なキャリア面談、エンゲージメント調査、処遇の見直し:これらへの投資が増えています(業種別の求人倍率)。

← 図は横にスクロールできます →
1人を採用するコスト 手数料+工数+立ち上がり期間で300万円超 1人を引き留めるコスト 年収50万円上乗せ・異動・面談
この差が、企業をリテンション投資へ向かわせた

リテンション施策の実際

企業が実際に取っている施策は、次のようなものです。エージェントは、これを「競合」として理解しておく必要があります。

施策内容候補者への効き方
処遇の改善昇給・昇格の前倒し、賞与の上積み年収不満で動く人に最も効く
定期的なキャリア面談上司または人事が、半年ごとに将来を話す「話を聞いてもらえない」不満を解消する
配置転換・異動の希望受付社内公募、異動希望の制度化仕事内容への不満に効く。転職しなくても変えられる
働き方の調整リモート、時短、フレックス家庭の事情で動こうとしている人に効く
エンゲージメント調査定期的にサーベイを取り、兆候を拾う退職の申し出の前に手を打つための装置

エージェントが​直面する|​カウンターオファーの増加

この変化が、エージェントの現場に現れるのがカウンターオファーです。

候補者が内定を得て、退職を申し出る。すると現職が「年収を上げるから残ってくれ」「来期から希望の部署に異動できる」と提示する。これが以前より確実に増えています。

企業側からすれば合理的です。採用コストを考えれば、50万円の昇給で引き留める方が安い。しかも、辞めようとしている人は優秀であることが多い。

エージェントにとっては、内定承諾後の辞退という最悪の形で現れます。決定が消え、返金が発生し、企業との関係も傷つく。

重要なのは、これを「候補者の裏切り」と捉えないことです。カウンターオファーは市場の構造から生まれており、事前に想定して準備すべきリスクです(内定辞退を防ぐクロージング)。

退職交渉の​事前設計|​引き止められる前提で​準備する

対応は、退職を申し出る前に始まります。

①引き止められることを事前に伝える。「おそらく引き止められます。年収を上げると言われるかもしれません」と、先に言っておく。想定していた提案は、想定していなかった提案より効きません。

②転職理由に立ち返る。年収が理由だったのか、仕事内容か、人間関係か。「その条件が改善されるなら残るのか」を、内定前に一度考えてもらう。ここが曖昧なまま進むと、カウンターオファーで揺れます(候補者と企業を同じ解像度で理解する)。

③「なぜ今まで上がらなかったのか」を考えてもらう。辞めると言った瞬間に上がる年収は、本来もっと早く上がっていてよかったものです。残った場合、次の昇給がいつになるかの保証はない。この視点を渡します。

④退職の伝え方を一緒に設計する。いつ、誰に、何と言うか。曖昧に伝えると交渉の余地を残します。「決めました」と伝えるのか「相談です」と伝えるのかで、その後がまったく変わります(退職交渉の支援)。

そして、残る判断も尊重すること。カウンターオファーを受けて残ることが、その人にとって正しい場合もあります。無理に動かした転職は、半年後に戻ってきます。

よくある質問

Q
なぜ企業は離職防止に投資するのですか?
A
年収600万円の人材を紹介で採用すると手数料180〜210万円に加え、選考工数と立ち上がり期間を含めて実質300万円超かかります。一方で引き留めは年収50万円の上乗せや異動で済むことが多く、採用より圧倒的に安いためです。
Q
カウンターオファーとは何ですか?
A
退職を申し出た社員に対し、現職の企業が昇給・昇格・異動などの条件を提示して引き留めることです。採用コストの高騰により増加しており、エージェントにとっては内定承諾後の辞退という形で現れます。
Q
カウンターオファーにどう対応すべきですか?
A
退職を申し出る前の事前設計が重要です。引き止められることを先に伝え、転職理由に立ち返って「その条件が改善されるなら残るのか」を考えてもらい、「なぜ今まで上がらなかったのか」という視点を渡し、退職の伝え方を一緒に設計します。
Q
引き止めを受けて残る候補者もいますか?
A
います。カウンターオファーを受けて残ることが、その人にとって正しい場合もあります。無理に動かした転職は半年後に戻ってくるため、残る判断も尊重すべきです。
まとめ

年収600万円の採用に手数料と工数を含めて300万円超かかる一方、引き留めは年収50万円の上乗せで済むという計算から、企業は離職防止・従業員満足度への投資を増やしている。処遇改善・キャリア面談・配置転換・働き方の調整が主な施策で、エージェントにはカウンターオファーの増加として現れる。対応は退職を申し出る前の事前設計で、引き止められることを先に伝え、転職理由に立ち返り、「なぜ今まで上がらなかったのか」を考えてもらい、退職の伝え方を一緒に設計することが必要になる。

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本記事は編集部の支援実務の経験に基づく見解です。個別の状況により最適な進め方は異なります。
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執筆・編集: THE AGENT 編集部
運営: 株式会社Sync Ascent(事業立ち上げ・採用コンサルティング)。数千名規模のキャリア支援と人材紹介事業立ち上げの実務経験に基づき、現場で使える情報だけをお届けします。|最終更新: 2026.09.05
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