コンサルティング業界の勢力図は、偶然ではなく歴史の産物です。1926年シカゴの一つの事務所から始まった分裂、優秀な個人のスピンアウトの連鎖、規制が生んだ分離、そして一つの事件による再編。今日のファームの性格は、来歴を辿ると驚くほど明快に説明できます。
本シリーズは11ファームの歴史を8本の記事に分けて解説します。このページはその目次と、業界全体の地図です。
各ファームの創業者・年次・社名変更・分裂・統合・日本進出・事件を、それぞれの記事で詳しく扱います。関心のあるファームから読み進めてください。
個別の記事に入る前に、全体の構造を押さえておくと理解が早くなります。コンサルティング業界の100年は、大きく4つの時代に分けられます。
黎明期
会計と科学的管理法が交わるところに「経営を助言する職業」が生まれた時期です。マッキンゼーの創業と、業界最初の分裂が起こりました。
戦略の時代
BCGとベインが登場し、経験曲線やPPMといった戦略の方法論が確立しました。この時期に各ファームが日本へ進出します。
IT・分離の時代
会計事務所からコンサル部門が切り離されていった時期です。アンダーセンの分社化と、エンロン事件によるBig4体制の確定が起こりました。
総合化とDXの時代
戦略ファームが実行力を、総合ファームが戦略機能を取り込んで互いに近づきました。あわせて日系の独立ファームが台頭しています。
コンサル業界100年の4つの断層
業界の起源は、1926年にシカゴ大学の会計学教授ジェームズ・O・マッキンゼーが開いた事務所です。看板には「accountants and management engineers(会計士・経営工学士事務所)」と記されていました。会計とエンジニアリングの交差点。ここから、今日の巨大産業が生まれます。
1937年の創業者急逝を経て、1939年に事務所は分裂。今日のマッキンゼーとカーニーは、この一つの事務所を共通の祖先に持つ兄弟です。
11ファームの歴史を並べると、3つの構造が見えてきます。
第一に、戦略系は「人が辞めて作る」歴史でした。マッキンゼーの分裂からカーニーが生まれ、ADLからヘンダーソンが出てBCGを作り、BCGからベインが独立した。優秀な個人が思想の違いで独立し、新しい方法論を打ち立てる。この連鎖が業界の多様性を生みました。現代の日本で「ベイカレントクローン」が生まれている現象は、この歴史の反復とも読めます。
第二に、総合系は「制度が形を決めた」歴史でした。監査の独立性という制度的要請がアンダーセンの分社を促し、エンロン事件とSOX法がBig4体制とアビームの独立を生んだ。ファームの形は経営判断だけでなく、規制によって決まってきたのです。
第三に、両者は今、互いに近づいています。戦略ファームがデジタル実装組織を持ち(BCG Digital Ventures)、総合ファームが戦略ブランドを抱える(Strategy&、EY-Parthenon)。「戦略系か総合系か」という区分は歴史的な出自の話であって、今日の業務内容の区分としては年々曖昧になっています。
ひとつは候補者の経歴を正しく読むことです。「デロイト トーマツ コンサルティング在籍」が2003年以前なら現アビームの系統、2008年以降なら現DTCの系統。年次と社名の対応を知らなければ、経験の意味を取り違えます(アビームの歴史で詳述)。
もうひとつはファームの文化を説明すること。ベインの結果主義、カーニーの独立志向、アクセンチュアの実装力は、いずれも創業と危機の物語に根を持っています。数字や年収表では語れないその背景を伝えられる担当者は、候補者の志望動機の質そのものを変えられます。
各ファームの現在の年収・働き方・選考は、コンサルの年収記事・激務の実態記事・アクセンチュア・ベイカレントの各ページで扱っています。
コンサルティング業界は1926年シカゴの一つの会計事務所から始まり、分裂(マッキンゼーとカーニー)、スピンアウトの連鎖(BCG、ベイン)、制度による分離(アンダーセン、アビーム)、事件による再編(エンロンとBig4)を経て今日の姿になった。戦略系は人の独立が、総合系は規制が形を決め、いまや両者は互いに近づいている。各ファームの詳細はシリーズ8記事で。
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