ラクスは2000年に大阪で創業した、日本では珍しい「老舗SaaS企業」です。創業者は2015年にシリコンバレーからの撤退を決断し、日本国内に全力投球することを選びました。同年12月に上場し、そこから株価は40倍以上に上昇しています。
※本記事は当該企業の公式サイト(沿革・創業ストーリー)、有価証券報告書、Wikipedia日本語版・英語版、経営者インタビュー記事等の公開情報をもとに編集部が構成しました(2026年9月時点)。年次は資料により差異がある項目があり、複数の出典で確認できた年を採用しています。
中村崇則は1973年、山口県生まれ。1996年に神戸大学経営学部を卒業してNTT(NTT西日本)へ入社します。しかしインターネット・バブルの只中の1997年、大学の同期らと無料メーリングリストに広告を付ける事業で会社を共同創業。「協調性がなく大企業ではあまり活躍できない」と感じ、1998年にNTTを退社しました。
2000年1月、株式会社インフォキャストを共同設立。そして同年10月、この会社を楽天に売却します。
その売却資金を元手に、2000年11月、大阪市都島区で株式会社アイティーブースト(現・ラクス)を設立。創業地に大阪を選んだのは、本人の地縁に加え、IT人材の採用競合が東京より緩いという判断からでした。この選択が、大阪本社・東京補完という同社独自の二都体制の原点になります。
創業時の主力はITエンジニアスクールでしたが、市場規模が小さく労働集約的で、長く続けるのは難しいと判断します。そこでスクール事業で得た利益を投下し、事業の軸足を移していきました。
2001年4月、問い合わせメール共有システム「メールディーラー」を月額課金で発売。今日でいうSaaSです。しかし当時、月額課金モデルは立ち上がりに時間がかかり、先行投資を支える原資が必要でした。
そこで同社が採ったのが二本柱の設計です。2002年5月からエンジニアを常駐派遣するIT人材事業を開始し、人月で稼ぐ現金収入でSaaSの育成を支える構造を、創業から1年ほどで固めました。「稼ぐ事業」と「育てる事業」を分けて持つという判断が、日本でSaaSがまだ言葉として存在しない時代の生存戦略でした。
NTTを退社
大企業では活躍しきれないと感じ、インターネット黎明期に独立の道を選びました。
インフォキャストを共同設立
同年10月に楽天へ売却し、その資金が次の創業の元手になりました。
アイティーブーストを設立
大阪市都島区で創業。IT人材の採用競合が東京より緩い環境を狙った選択でした。
メールディーラーを月額課金で発売
問い合わせメール共有システムで、今日のSaaS事業の原型です。
IT人材事業を開始
人月で稼ぐ現金収入がSaaSの育成を支える二本柱の構造を固めました。
社名をラクスへ変更
「楽」を届けるという事業の性格を社名に込めました。
シリコンバレーから撤退
米国事業の不振を受けて撤退を決断し、日本国内へ経営資源を集中しました。
東証マザーズに上場
撤退を決めた同じ年の上場でした。以降、株価は大きく上昇しています。
東証一部へ市場変更
楽楽精算が国内を代表するSaaSへ成長しました。
ラクスの主な沿革
2010年に社名をラクスへ変更。「楽」を届けるという事業の性格を社名に込めています。
同社の歴史で最も重要な判断が2015年に訪れました。進出していた米シリコンバレーで、モバイルマーケティングソフトウェアの売れ行きが思わしくない。中村は撤退を決断し、日本国内の事業に全力投球することを選びます。
そして同年12月、東証マザーズに上場。撤退と上場が同じ年に起きたことになります。この選択と集中は結果的に正しく、その後株価は4,800%余り、つまり40倍以上に上昇しました。主力の経費精算システム「楽楽精算」は累計導入1万社を超え、国内を代表するSaaSになっています。
Founder's Words
「食べるものと住むところさえあれば、どうにかなる」
中村崇則
大企業を離れて起業した判断について、後年こう振り返っています。この気軽さと、SaaSを育てるためにIT人材事業で現金を稼ぐという緻密な設計が同居しているのが、同社の経営の特徴です。
ラクスの創業は、「稼ぐ事業」と「育てる事業」を同時に持つという経営設計の好例です。人材紹介でも、既存領域で稼ぎながら新領域を育てる構造を作れるかどうかが、事業の寿命を決めます(チャネル設計の記事)。
そして撤退の決断です。米国から引くと決めた年に上場した。この事実は、撤退が後退ではなく資源の再配分であることを示しています。SaaS業界への転職支援では、SaaS転職ガイドとあわせて、この会社が「日本の老舗SaaS」と呼ばれる理由を語れると説得力が増します。
ラクスは2000年、NTTを辞めて前の会社を楽天に売却した中村崇則が大阪で創業した。月額課金のSaaSは立ち上がりに時間がかかるため、IT人材事業の現金収入で育てる二本柱の構造を作った。2015年にシリコンバレーからの撤退を決断し、同年に上場。選択と集中が奏功して株価は40倍以上に上昇している。
記事の内容を前提にして、あなたの状況に合わせた答えをAIに出させます。質問を入れて「ChatGPTで相談」または「Claudeで相談」を押すと、記事の要点と質問がセットになった状態で開きます。