1981年9月、24歳。米国留学から帰った青年が福岡で会社を興します。資金は米国で開発した自動翻訳機の特許をシャープに売却して作りました。そして事業の選び方が異例でした社員を雇って市場と技術を1年半調べてから、創業に踏み切ったのです。
※本記事は当該企業の公式サイト(沿革・創業ストーリー)、有価証券報告書、Wikipedia日本語版・英語版、経営者インタビュー記事等の公開情報をもとに編集部が構成しました(2026年9月時点)。年次は資料により差異がある項目があり、複数の出典で確認できた年を採用しています。
孫正義は1957年、佐賀県鳥栖市生まれ。米カリフォルニア大学バークレー校に学び、在学中に自動翻訳機を開発します。
この特許をシャープに売却し、創業資金を確保しました。シャープ副社長だった佐々木正の後押しで銀行融資の保証も取り付けています。1980年に帰国すると、まずコンピュータ卸売事業のユニソン・ワールドを福岡で興しました。
特筆すべきは、次の事業の選び方です。孫は社員を雇って市場と技術を1年半調べたうえで創業に踏み切りました。条件は「資本が小さく、成長性が高い」こと。数業種に絞り込んだ末に選んだのが、パソコン用パッケージソフトの流通業でした。
1981年9月、福岡で株式会社日本ソフトバンクを設立。24歳での起業です(登記上の本店は東京都千代田区四番町、創業の地は福岡市とされます)。
当時の市場構造に、明確な空白がありました。パソコンの普及でソフトの種類は増える一方、メーカーから小売店へ商品を届ける卸機能を担う事業者がほとんど存在しなかったのです。利用者は複数のマイコンショップを探し回らなければ、目当てのソフトにたどり着けませんでした。
孫はここに、書籍における取次に相当する中間流通を設計します。ソフトハウス・小売店・ユーザーを1社で結ぶ。これが日本ソフトバンクの事業でした。
経営経験の不足も自覚していました。日本警備保障の元副社長・大森康彦を社長に迎え、自らは会長に退いています。24歳の起業家としては異例の判断です。
帰国しユニソン・ワールドを設立
米国で開発した自動翻訳機の特許をシャープへ売却した資金が元手になりました。
日本ソフトバンクを設立
24歳で創業。パソコン用パッケージソフトの卸売業を始めました。
「Oh! PC」「Oh! MZ」を創刊
専門誌の発行で流通と情報を同時に押さえました。
ヤフーを設立
米Yahoo! Inc.との合弁で、インターネット事業へ本格参入しました。
Yahoo! BBを開始
ADSLモデムの無料配布で、日本のブロードバンド普及を一気に進めました。
日本テレコムを買収
固定通信事業を取得し、通信事業者への道を開きます。
ボーダフォン日本法人を買収
携帯電話事業へ参入しました。
英ARMを買収
半導体設計の中核企業を取得し、投資会社としての性格を強めました。
ソフトバンクの主な沿革
創業間もない頃の逸話が、この会社の性格をよく表しています。
当時ソフトウェア産業を担当していた記者の回想によれば、聞いたこともない小さな会社から、経団連の記者クラブに記者会見の申し込みが来たといいます。名乗ったのは「日本ソフトバンク」。設立間もない、知名度が全くない会社でした。
記者は驚きます。当時はIBM全盛期で、記者たちの関心はハードウェアの処理スピードや記憶容量に集中しており、ソフトウェアのニュースが記者クラブで発表されること自体が皆無だったからです。「前代未聞のことだった」と記者は振り返っています。
市場がまだ認知していない領域で、最初から業界の中心に向けて発信する。この姿勢が、その後のヤフー設立(1996年)、Yahoo! BBのモデム無料配布(2001年)、ボーダフォン買収(2006年)、ARM買収(2016年)へと続いていきます。
Founder's Words
「豆腐屋のように、一丁(一兆)、二丁(二兆)と数えたい」
創業まもない頃、社員2人を前にミカン箱の上に立って語ったとされる逸話です。売上を兆円単位で数える会社にすると宣言し、当時の社員は驚いたと伝えられます。実際にグループはその規模に到達しました。
ソフトバンクの創業で最も学ぶべきは、事業を「選んだ」プロセスです。思いつきで始めたのではなく、社員を雇って1年半市場を調べ、「資本が小さく成長性が高い」という条件で絞り込んだ。起業=情熱、という通俗的な理解を覆す事例です。
そして自分の弱点を認めて社長を外から迎えた判断。24歳で会長に退くという選択は、組織を作る側の候補者に伝える価値があります。企業の現況はソフトバンクの企業ページをご覧ください。
ソフトバンクは1981年、米国で開発した自動翻訳機の特許をシャープに売却した資金をもとに、24歳の孫正義が福岡で創業した。社員を雇って1年半市場を調べ、「資本が小さく成長性が高い」条件でソフト流通を選んだ。書籍の取次に相当する中間流通の空白を突く設計と、経営経験を補うため社長を外部から迎える判断が、その後の拡大の土台になっている。
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